活動開始当初は着物とは一切ご縁はなかったのに、今では着物はマストマテリアルに。
着付け教室にも通い、自分でも着られるようになりました。
そうなった経緯と、なぜそんなに着物にこだわるのか、をこちらでお話しします。
着物との出会いは雷に打たれたような突然で強い衝撃
naomariaが初めて着物を手にしたのは2013年初め。初めは小さなハギレからスタートしました。
現代の化繊ちりめんを収集していたけれど、もっと生地が薄く扱いやすいものはないかと模索を続ける日々。
そんなとき教えられた着物リサイクル店へ足を踏み入れた瞬間、足が止まったまま動けなくなった。
naomariaの心を一瞬で奪ったものが目の前に!!!
天井から吊り下げられた青地に茜色の更紗模様のハギレ。
ゆらゆらと揺れる軽やかさと、絹ならではの艶やかさ。
上品な中にも個性がしっかり浮きだつ存在感。
雷に打たれたような強い衝撃が身体中を走り抜け、言葉を失った。
この瞬間「作品に着物を使う」と決意。
以来、作品に欠かせないマストアイテムとなっている着物生地。
使用するのは、主に30~50年程前の着物が中心。
2023年からは積極的にアンティーク着物も作品に取り入れています。
着物に対する想い
リサイクル着物を作品に使うようになり、着物について学ぶ機会も必然的に増えていく。
1枚の着物に必要なお蚕の数は2,000匹以上。
これだけのたくさんの命が宿っているという事実に強い衝撃とショックを受ける。
このとき「捨てられる着物を一枚でも多く救う!」という熱い想いが込み上げてきました。
お蚕を育て、吐き出した糸を紡ぎ、織り、染色し、柄を手描きし、お仕立てする。
このような簡単な列挙では済まないほどの工程が着物一枚の向こう側には存在している。
長い歴史の中で培われた伝統や技術、知恵や工夫、そして職人さんの想いや命までもがそこに在る。
目に見えないだけで、実は自分が手にする着物と大きく深く関わっている。これは変えられない事実。
大量生産・大量消費で身についてしまった簡単に”処分する”という思考。
得も言われぬ不安が過ぎることが増えていく。
増えて行くも、当初は「(自分が)いかに使うか」という自分が「今」できることしか考えられず、こちらの問題に向き合うことは二の次となったままとなる。
なかなかうまく扱えない着物生地
それまで扱っていたちりめんとは違い、着物生地は極めて薄い。
特にnaomariaが好む古い着物は、薄いものが多く生がないものもある。
どうやったらハリを出せるのか?
さまざまな濃度に薄めた糊を表面に塗ったり、コテを使うなどして試行錯誤が続いた。
古着が苦手なところもあり、ハギレは必ず洗うところから始める。
色によっては染料がしみ出すことが多々ある。
それでダメにしてしまったハギレは数知れず。
この頃には着物一枚で購入する事も増え、思い切った実験ができるようになるも、失敗すれば凹む毎日。
洗い方を工夫し、どんな色だと染料がしみ出しやすいのかを感覚で知れるようになり、ハリを出すための工夫は、パーツの形状自体を変更することを思いついた。
「龍のうろこ」の誕生。
そして着物コラージュアートの前身が誕生した瞬間。
2013年12月のこと。約1年をかけここまでたどり着いた。
着物は「洗い張り」で洗うことも
解いた古着の着物は、古来の方法「洗い張り」で洗うことが多い。
夏の暑い日や風の強い、天候が優れないときは洗わないか別の方法であります。
洗い張りで洗った着物生地は、従来のように反物の状態で保管することで、作業効率も上がる。
一枚の着物を解くスピードも、以前は4時間以上かかっていたが、今では半分以下まで短縮できるようになっている。
▶ 『解いた着物を昔ながらの方法「洗い張り」で洗う』
▶ 『解き洗った着物生地をきれいに保管するのに使える100均アイテム』
着物が自然と集まってくるが使い切れないジレンマ
2015年から本格的に着物コラージュアートの制作を始める。
活動を進めるにつれ、ご厚意で着物をいただく機会が増えている。
親戚や友人、個展へいらして下さったお客様まで。
一時100枚を優に超え、作品を作るだけでは活用しきれないと思い始める。
ただ何をどうすれば良いのかアイデアは浮かばずアート作品を制作するだけの日々。
制作しては個展を開催するという繰り返しの中で、膨らみ続ける心のモヤモヤ。
「眠ったままの着物に再び日の目を」
と言う本人が実行できていない後ろめたさと、無力さ、無念さが、常にnaomariaを襲うようになる。
着物リメイクされる方に譲ったり、ハギレとして販売したり。
思いつくことを試してみるも、心の中の曇りは一向に晴れずにいた。
大量生産・大量消費の行く末の憂いをここでまた思い出す。
突然ひらめいた新たな着物古布の活用方法
2021年初め、過去イベントで体験したフランスの伝統工芸「カルトナージュ」を突如思い出す。
フランスのプリント生地で作られることの多い布箱を着物古布で作ることを思いつき着手。
完全な独学のため、ひたすら作る⇔分析・検証を行う。
着物生地に接着剤が付いてしまうとシミのようになり見た目が美しくない。
接着剤がしみ出しやすいほど薄生地でもある着物生地。そこが一番の問題点で難点。
その問題を解決するため、今までの経験を参考に試作を繰り返す。
数ヶ月後、着物古布ならではの作り方を編み出し、同年6月開催の個展(2021.6 指定有形文化財商家駒屋)に出品するまでに至る。
この過程の中で、「着物(古布)の活用方法には限りがない。可能性が無限大だ」と強く感じる。
こうしてnaomariaの中では「着物リメイク=洋服・バッグ」という構図はもはや完全に成立しなくなった。
制限ある中で無限の世界を創造する
naomariaにとって、「着物コラージュアート」は処分される着物を再生利用する究極な形であり方法。
また言葉では自分の想いをうまく伝えられないことも多く、自己表現のため、また、自分が自分であるための必要不可欠な生きるためのツールでもある。
アートという形を通して、着られなくなった着物の再活用には無限の可能性があるのだという実例を持って観ていただく方に投げかけられる。
比類なきアートであるからこそ、そのインパクトはとても強く大きい。
実際に、これまで活動してきた中でお会いした多くの方々の「不要となった着物に対する視点」が変わったのを会話から感じる。
● 今あるモノを大切にする心を育むこと
● 日本が誇る伝統を後世にも繋げること
いずれも微力ながらも全力でnaomaria自身ができることをやり続けていきます。
そして何よりも、構成要素がうろこのみという大きな制限の中で、無限な創造性の世界を繰り広げることに一番の楽しさを見出しながら、naomaria自身がまず何よりも笑顔で楽しく創作活動を続けていくことが大切だと感じています。