解いた着物を昔ながらの方法「洗い張り」で洗う

古着着物を使って創作する場合、まずは解くところから始まると思います。

その解いた着物はそのまま使うのではなく、きれいな状態にするためもちろん洗いますよね?

解いた着物を洗う方法は3つあります。

手洗い
洗濯機
洗い張り

手洗いと洗濯機は想像付くと思いますが、洗い張りとは何でしょう?

 

 

洗い張りとは?

伝統的な着物の洗い方は、解いて反物の状態にし洗い、しわにならないよう張って干すことから「洗い張り」と呼ばれています。

板に張る方法では大きな板が必要。昔は雨戸などを使っていたそうです。
この方法では、生地が乾くときによれやすいので、その後のケアに少し手間がかかるような印象があります。

着物ではないですが。インドでは染めた更紗を地面に広げて干すのですが、乾くと風に吹かれクシャッとなっている光景を写真で見ました。

私が洗い張りをする前はホームクリーニングがメインでした。この場合、アイロンを掛ける作業が思いのほか重労働。

ホームクリーニングでは、脱水をしすぎないことがポイントです。
半濡れの状態でアイロン掛けをしていきます。これが大変。

しっかり水分飛ばさなきゃいけないし、シワもしっかり伸びない場合もあるし、下手すれば大きく縮みむし。だからといって板張では、広い場所も十分な大きさの板もないので、私は伸子を使って干しています。

 

江戸時代は丸洗い?!

昔の時代劇ドラマ『伝七捕物帳(でんしちとりものちょう)』をちらっと見たとき、町民が丸洗いした着物を物干し竿に干していたのです。

え?丸洗い?!

なんとなく襦袢のようにも見えたし、単衣だったのは明らかでした。
江戸の時代では、着物は丸洗いをしていたの?と、とても驚いたのですが、調べてみて納得。

画像お借りしました。江戸時代の丸洗い

江戸時代も「洗い張り」をしていたようです。
そんな様子が描かれた絵も残っているので間違いないでしょう。

ただし、「洗い張り」は襦袢の上に着る着物に限ってのこと。
衣替え毎に解いて洗う、というのが慣例のようでした。

肌に直接触れるような襦袢などは、毎日のように洗っていたそうです。
今のお洗濯と同じですね。肌着など直接肌に触れるようなものは毎日洗濯。
おしゃれ着などは、毎回ではなくある程度着たらクリーニングへ。今も昔も同じ感覚ですね。

画像お借りしました。「洗い張り」歌川豊国(初代)/ 画 蔦屋重三郎 / 版 寛政年間(1789~1800)

井戸の左横で麻の葉模様の反物を広げて干しているのが洗い張り。
伸子を使っています。その左が板張。

 

まずは着物を解く

まず初めに解く箇所が決まっています。

それは「衿」。衿部分は最後に仕立てられるところ。
仕立ての順番を逆行することで、より解きやすくなる。
そのため、衿から順番にリッパーで、丁寧に解いていきます。

▶ 着物を解く順番

 

解いたら一枚の反物にする

洗い張りする場合、ほどいた部位を一枚の布にするため、布の端と端、襟ぐりの切り込みを縫い合わせます。

専門業者では、この作業は手では行わず専用の機械を使って縫い合わせます。
端(は)縫い」と呼ばれる作業です。
短辺両端に生地を縫い付けておきます。ここに張手の針を刺し生地を固定します。

張手

 

当然のことですが、部位を繋げれば繋げるほど長くなります。
反物は12~15mの長さがあるものです。
干す場所に余裕がなければ部位毎、若しくは干すことが出来る長さにカットして準備します。

写真のように生地が長いと、強風下では抵抗を受けやすくなり、張手を吊している土台がしっかりしていない場合は倒れることがあります。

張手を吊す土台の足元にコンクリートブロックなどの重しを乗せしっかり固定するか、風のない日に干すか、のどちらかがお勧めです。

 

洗う

一枚の反物に仕上がったら「洗い」の作業に入ります。
絹が洗える液体洗剤を水に入れ反物を浸しながらタワシで洗います。
タワシはアクリルなどの化学製品ではなく、自然物を使用した亀の子たわしがお勧めです。

 

洗い終わったらきれいな水ですすぎをしっかり行います。
洗剤が残っていると変色の原因となります。すすぎが終わったら干します。

一度に洗う反物(の状態)が長いと、干すときの扱いが特に大変です。
最初は袖部分から試してみると良いですね。

外に干す場合は、洗った生地が地面に付かないよう工夫する必要があります。
一方の張手に、布を巻き付けて持てば作業しやすいですよ。
水がしたたり落ちないようバケツなどに入れ、干す場所まで移動してください。

 

伸子を打つ

慣れていない場合は、伸子は2~3cm間隔で刺していきます
間隔が小さい方が、生地のゆがみが少なくて済むからです。間隔が大きいと、伸子と伸子との間の生地端が弧をなします。

生地の伸縮率を見極めることが難しいので、間隔を小さくすることをお勧めしますが、見極めをしっかり出来る方、もしくは気にしない方は、どの間隔でも良いです。
ただどれだけ大きくてもプロは10~15cmほどの間隔で打つようです。

 

風があると乾きが早いです。少しの風で十分です。
心配なら午前中に洗って干してしまいましょう。その日のうちに乾くはずです。

ここでの注意点!

直射日光を避け、日陰干しをして下さいね。

 

しっかり乾いたら伸子と張手を外して終了。端縫いをしたなら、端縫いを解きます。

 

 

洗い張りした生地の保管の仕方

せっかく解いてきれいに洗ったのだから、折りたたまず、反物のように紙管などに巻いて保管します。

着物は湿気を嫌うので、紙などは巻かずこの状態のまま保管してください。