着物を解くと反物の状態になります。
厳密に言えば、袖や身頃などのパーツに切り分けられているので大きな1枚の生地にはならないけれどね。
着物は解くと長い生地になる?!
着物を解いた状態をざっくり描いてみると、下図のようにパーツが並ぶのが判る。
パーツの配置はこれが絶対的な決まりではないので、だいたいのイメージとして捉えてね。
▶ 『着物分解図と解体所要時間』
で、とある着物を解きパーツを採寸した図がこちら↓
全部繋がっている状態だと12m程の長い生地だと判る。
反物の多くはこの約12mで作られる。
三丈物(さんじょうもの)と呼ばれる所以がこの12m。昔の単位で「三丈」です。
これより短い場合は、仕立て直しで短くされたか、仕立てたときに余ったため「余りぎれ」として仕立てた方に手渡される。
今は昔の方より身長や体格が大きい方が多いので、12~14mくらいが主流。
いくら切り分けられているとは言っても、1パーツの長さは短くても1m近くある。
洋生地のように幅広ではないけどね。
身頃や袖などの並幅はだいたい36cm。
衽や衿などの部分はだいたい並幅の半分の18cmが多い。
(衽の幅を大きく取って、衿部分を小さな幅にすることもある)
解いた着物生地は、なかなかの分量になるのが判りますよね。
そうなると湧き上がる疑問
着物1枚で何をどれだけ作ることができるか?(洋服やバッグ以外で)
なので、チャレンジしてみた。
着物を生地にし使える状態にする準備
古着着物を生地に使える状態にするまでの段階は3段階。
naomariaの場合は4段階です。
②洗う
③アイロンをかけるor自然乾燥
(④紙管に巻く)
解く
ここで使った着物生地はネットショップで仕入れた更紗模様のかなり古い袷着物。
▶ 『着物を解く順番』
解くとこんな感じ。
それぞれのパーツを採寸↓
身頃が306cmとなっているよね。
身頃は前と後ろが1枚で作られているものなので、単純に着丈が150cm程となる。
着丈は自分の身長くらいが良いとされているので、かなり小柄な方がお仕立てしてもらったのだと判ります。
洗う
では次の段階の「洗う」です。
解いた着物の洗い方には3つの方法があります。
2.手洗いする
3.洗い張りする
保管する
乾いたら紙管に巻いてすぐに使える状態にしておきます。
▶ 『解き洗った着物生地をきれいに保管するのに使える100均アイテム』
洗い張りしたらアイロンをかける必要はないですけど、洗濯機や手洗いの場合はしわが必ず残ってしまうのであらかじめアイロンをかけておくとスムーズに制作作業に取りかかれますよ。
あと、たたんで保管してしまうと折りじわができ、作業前にアイロン掛けをしないといけなくなるので二度手間となり時間がもったいないです。
1枚の着物から作った作品例
紙管に巻いたおかげですぐに制作に取りかかれる。だからとても捗る。
額装タイプ
こうして制作した作品群の第1弾は、額作品系が多い。
これは私の制作スタイルがこれだから。
一番左がファブリックパネル。
他は額装作品。
柄合わせが大変だけど、コツを掴めば簡単だよ。
コツはこちらの動画でお伝えしてます↓
カルトナージュで作る布箱
カルトナージュで作ったボックスもある。
後ろに移ってる子のアップはこちら↓
中も表も同じ生地で作ってます。
手前の子はこちら↓
こちらは黒く染めた綿の着物生地を使っています。
他に作った布箱は、、、
お菓子の空き箱を利用しているので、かぶせ箱ばかり。
ここまで全て半幅部分で作っています。
とはいっても使い切れていない。
サイズにもよるけど、たった18cmほどの幅であってもこれだけ作ることができるのだから、着物生地は優秀だな、と既に感動。
本当にコスパがいい!!!
たくさん布箱を作ったのは良いけれど、この状態で収納するには場所を取る。
これら布箱を収納する大箱を作りました。
全て同じ生地で出来ているだけで統一感溢れるね。
サイズや形状が違っても気にならないくらい。
「同じ生地」というマジックはすごいね。
アート作品
そしてアート作品。
コラージュパーツはもちろん額装マットも同じ生地で作っている。
こちらもコラージュ作品。
赤色部分は全てこの着物生地で出来ている。
場所によって赤が異なって見えるんだけど、これは小紋柄ならではの特徴。
パーツを取る場所によって赤の分量が違うのでそう見える。
こちらは衝立作品。
額縁屋さんで不要在庫となってしまっていた枠部分をアンティーク着物で装飾しコラージュしたもの。
一部にこちらの生地を使っています。見えるかな?
これだけ使っても実はまだ少し余っています。
こちらは大人の着物。
もう少し大柄の方の着物だったら、まだまだ作れたでしょうね。
七五三の着物をフル活用
自身が着た七五三の子ども着物。
何人もの従姉妹から渡り歩いてきた着物が私の元でお役目が終了し、タンスの中で何十年も眠っていました。
記憶はないけど、こうして本当に着ていたことが写真から証明されています(笑)
こちらも同じく、解いて洗い紙管に巻きます。
パーツサイズはこちら↓
幅のばらつきはあるといえども10mほどもある生地を使いきるというのは、想像以上に大変な作業でした。
全部で21点。
大きく分けて3つのスタイルに仕上げました。
そしてそれら全て2022年の個展(2022.4 指定有形文化財商家駒屋)で披露しました。
3つのスタイル
①龍のうろこ
全部で8点。
こちらはnaomariaの代表的な作品スタイルなので積極的にこのスタイルで制作。
パーツとなるうろこは平均的な大人の親指サイズなので、元の柄は一切判らなくなる。
それを補うかのように額装マットを同じ生地で作った。
②額装
全7点。プラス御朱印帳1個。
子ども着物の場合、子どもの成長を願った大柄の吉祥模様が多いのが特徴。
それらが見て判る状態で作りかえたい場合は額装や次に紹介するファブリックパネルがオススメ。
③ファブリックパネル
全4点。プラス掛軸1個。
額装タイプは額縁に入るけれど、ファブリックパネルはパネルに生地を巻き付けるだけなので、とてもカジュアルに飾ることができる。
額装やファブリックパネルに作り換えたら、着た本人はもちろん両親や祖父母などに贈ることも可能だし、喜ばれますよ。
まとめ
どういう目的で着物をリメイクするのかにもよりますが、洋服やバッグでなくても活用方法はたくさんあります。
その人それぞれの事情や想い、得意なことが複合要因として着物が新たに生まれ変わる姿を決定づけます。
是非ご自身のアイデアや得意なことを大いに発揮して、1枚でも多くの着物を救って下さい。