大須骨董市で仕入れたアンティークな着物生地。のれんに生まれ変わってました。
エンジと青色が曲者っぽい。。
洗ったときの染料の染み出しを心配した。
でもよくよく見ると。。。
こちらは大正後期のものなんだけど、色がきれいに残ってるよね。これ化学染料です。
だから色あせがないし、洗ったとしても色移りの心配はほぼない。
明治維新以降、化学染料が海外から入ってきてからの日本はハッとするようなビビッドな世界があちこちで溢れてたんだろうなぁ。
浮世絵も明治以降の赤が劇的に変わってる。
まさにこの生地のエンジみたいな強烈な印象を与える赤ですよ。
エシカルな取り組みが多い現代では、この化学染料で奇抜に染め上げられた生地は敬遠されがち。
そんな時代だからか、洋服も車もおうちの外装すら落ち着いた色合いが多い。
だからこそ同じくブームとなっているアフリカンファブリックのような強い色合わせがより際立つ。
そんなアフリカンファブリックの色世界に通ずる着物は銘仙やド派手な襦袢。
銘仙が人気なのって、デザインだけじゃなく配色も理由の一つじゃない?
そう思うと、現在流行しているニュアンスカラーに満足出来ない人ってたくさんいそう。
私もそのうちの一人。はっきりパキッ!とした色が好きですから。
話を戻して。。
私は作品作りに古着着物を活用している。
ハッキリとした色合いが好きな私は、当然ながらそんな色世界を目指す。
ただそんなハッキリした強い色の着物ってそんなにはない。
銘仙ですら、単体で見れば鮮やかだけど、組み合わせれば途端に色がくすみ出す。
私の作品の多くは多色使いが特徴。
いろんな着物生地を組み合わせれば組み合わせるほど色が沈み暗く見える。
それを解決するためにすることが
染める
自分の思う色に染めれば、作品の世界観を壊すことなく表現出来る。
あと、同じ色相(赤とか紫とか)でも若干色味が違っていて、合わせてみても心地よくない場合があります。
これは色には
ブルーベース(青味がかった色)
という基本的な2つのグループがあるから。
配色の基本は、イエローベースはイエローベースで。ブルーベースはブルーベースで合わせる。
まんべんなくそれを達成出来るほど着物を保管出来ないし、収集もできない。
そうなるといったん全部を染めて色調(トーン)を整えるしかない。
強制的に色調整をする、って感じ。
それをしたのがこちら↓
もともと生地の裏はまっ白。
裏面も見える作品を作るので白部分を消したく、全体に紫を入れた。
こうして出来上がったのがこちら↓
周辺のふわふわが染めた生地で出来ています。アレンジした後に少しペイントしているので、いろんな色が見えます。
ちなみに真ん中のうろこは741個あります。
こちらはピンクやグリーンで染めています。
同じ染料でも色が違って見えるのは、使っている生地が違うから。十数種類の生地をここでは使っています。
織りや生地厚の差があるのはもちろん、地色があればその色が反映されて見えるので見た目が異なる。
この色の違いは必要ないと言う方は、一度全て同じ染料で薄く染めトーンを揃える。
薄い色のフィルターをかけるイメージね。
色の付いたサングラスをかけると、見える世界がグラスの色に寄ってるでしょ?そんな感じになる。
全体の色を統一させ、好きな色を重ねると全体がうまく調和します。
染める場合、私が使う生地は胴裏や八掛。
胴裏や八掛はリメイクにはあまり使われない部分。
積極的に使うため、染めるといった思い切った手の加え方をします。
作品作りのために生地を染める場合、化学染料を使います。
最初の説明どおり「発色が良い」から。
私が使う染料は「みやこ染め」のコールダイオール。
コールダイオールは煮込まなくても染められる簡単な染料。
オンラインはもちろん、ホームセンターや手芸屋さんで購入出来ます。
詳しくはみやこ染めHPをご覧下さい。
染めのワンポイントや染料についてお話ししてます↓
染めたい色だけ染料を揃えないといけないのか?
答えはNO!
生地はいろいろな種類や色があるので、それらを上手く活用すればたくさんの染料を用意しなくても、色の変化を出せる。
一度染めた生地を乾ききる前に、違う色の染料で上から染めればグラデーションが出来たりもする。
余った染料を混ぜ合わせて上から染めると、それぞれで染めたものと系統が同じ色となる。
心地よく色同士が合い、よりアレンジに深みが増すからオススメ。
ただ色数が多過ぎると暗くなっていくので、2色までが限度かなぁ、と。もちろん好みですけどね。
最近人気のニュアンスカラーぽく仕上げるには、一度全部薄いグレーで染め、乾いたらカラーを入れれば出来ます。
こちらでは化学染料をご紹介しましたが、草木染めなど自然物を使った染めをされたい方もいらっしゃるでしょう。
私はタマネギの皮や紅茶の出し殻で染めたことしかないのでなんとも言えませんが、着物生地を使うなら白い生地を使った方が良いと思います。
よりきれいな色を楽しむには、地色が邪魔しない方が良いじゃないですか。
化学染料ならある程度カバーできるけれど、自然の染料はそうはいかないことの方が多い。
着物生地を使うなら羽二重、礼装用の襦袢がオススメです。
ちなみに、、
ポリエステルを染めたい場合は、専用の染料をお使いください。
みやこ染めならば「ポリエステルダイ」というものがあります。
絹やウール専用の染料「酸性みやこ染め」がありますが、個人的に「コールダイオール」で十分だと感じます。
着物リメイクやアップサイクルでは、そのままの姿を活用して作品を作られることが多いのですが、どうしても調和が取れない場合は「染める」という手段を使ってみてください。
それすらしないで「使い途がない」と放置しているだけなんて着物がかわいそう。
創作は完全に自分の世界なのだから、どのように扱っても良い。(オーダーはそういうわけにはいかない)
胴裏や八掛などリメイクするには困ってしまうものは積極的に染めてしまおう!
私は着物デストロイヤーとして思い切ったことをやることを心がけている。
というのも、みんなが思い浮かぶようなことをしてても、発展しないからね。
色を塗りたくるなんて、元の姿が判らなくなるから着物を使うなんて意味あるの?って言われがちだけど、新たに素材を購入するよりは断然エコ。
1枚でも多く捨てられる着物を救う
という想いが根底にあるので、それを実現させるためにはそれなりのインパクトが必要。
インパクトあるからこそ、いったん「考える」という作業を相手に届けることができる。
このままではいけない
という思いがあるなら、これまでやってきていないことにチャレンジすることは大事です。