サイズ調整が容易な子ども着物

大須にあるリサイクルショップで110円で購入したアンティーク並みの古い子ども着物。

大きめの着物が小さな子ども用に仕立て直されていた。
七五三に着たのかな?
母親か祖母が娘または孫のために一針一針裾上げしてたんだろうね。
そう想像するだけで胸が熱くなった。

身頃の幅と丈、袖丈の3カ所のサイズダウン。
まずはそれを解いていく。

身頃丈の復活

身頃幅の復活

袖丈の復活

中振り袖かな。
袖丈は通常より15cmほど長く(生地で言えば30cmほど長い)、着丈は10~20cmくらい短い。

もともと少女のために仕立てられた着物かも。
確かに、柄を見ると子供っぽい。

こうして元のサイズが分かり想像が繰り広げられた後、しっかり解いていく。

 

祖母 → 母 → 子ども

という3世代にわたって長く着られる衣服として着物は重宝されていますが、同一人物でも年齢に応じてサイズを作りかえることが可能。


その良い例が今回ご紹介した上のお着物です。

 

そして私自身が着用した七五三の着物。

全体像はこんな感じ↓

記憶はないけれど、七五三の時にこれを着たのだと思うとなかなか解くことが出来ないでいました。

そうはいってもそのまま眠らせておくのもどうかと思い、大規模な個展開催をきっかけにいよいよ手を加える決意。

七五三の着物を使った作品の展示コーナー
(有形文化財 商家駒屋)

解きながら「うちの親にしたらセンスの良いものをチョイスしたなぁ」と感心するのも束の間。

衿部分に刺繍を見つけて少しフリーズしてしまった。

これうちのじゃない。親戚のお着物でした。
数人の従姉をまわり私の元へとたどり着いたみたい。
どおりでセンスの良い着物なわけだ(笑)

従姉の年齢を考えると、こちらの着物は60年ほど前のもの。
数字だけ聞くとずいぶん古い気がするけど、自分の年齢を考えるとそう昔ではない気がしてしまう。

七五三と言えば、みんな同じ年齢で着物を着る。
が、みんなそれぞれ体の大きさが違う。

私の直前に着た従姉妹は、体が大きく7歳には譲り受けた着物を着ることが出来なかった、という。
小 → 大の許容範囲はあるけれど、大 → 小の対応はかなり幅が広い。

 

祖母 → 母 → 子どもという流れだけに限らず、こんな風に一家族を超え着物が旅することもある。
そのぶんサイズを適応させなくてはならない

似通った体格なら直さずに着られる。
洋服なら難しいことも、着物なら問題のないことも多い。

例えばパンツなら、足の長さ・太さ、腰回りの肉付きなどによってはアウトだったりするけど、着物なら見頃の巻き方とおはしょりでどうとでもなる。

この三か所の詰め具合でだいたいが問題クリア。
着物がどれだけ万能なのか改めてご理解いただけたんじゃないかな。

これは簡単な構造にあることが大きい。
洋服のように曲線が多いと、リサイズできるところが限定的となる。

ホント着物は素晴らしい。
生地、染め、柄だけでなく合理的な構造までと感服する点に溢れている。

 

解いた着物は必ず洗う。

それはきれいにすることで、カビや虫喰い、臭いを防ぐことができるが、くすみが取れ柄の発色が良くなる、というメリットもある。