戦前までメジャーだった真っ赤な裏地「紅絹」

着物を解いているとたまに見かける真っ赤なインナー。「紅絹(もみ)」と呼ばれるものです。

 

 

紅絹とは?

紅絹

紅絹(もみ)とは平織りの極薄の絹地で、ウコンで下染めしベニバナで上染めし真っ赤に仕上げる。
べにばなを揉んで染めることから「もみ」と名がついた。

赤いを肌着に身に付けると体に良いという話から、胴裏(どううら)には紅絹が積極的に使われていた。

真っ赤な下着を着けると健康に良い!

とかいう話を聞いたことがある。それって昔からの話だったんだね。
千原ジュニアさんが真っ赤なおパンツを履いてるってTVで言ってたのを思い出した。

 

いくらインナーといえども、胴裏部分に使われているので量はそれなりにある。
八掛部分はあっという間に使い切ってしまうけど、胴裏はそういうわけにはいかない。

汚れがひどいものは省くけれど、なかなか状態がよいものが多いのです。
これは何によって染められたのか、が理由だと考えます。

 

ウコンには防虫・防菌効果があると言われています。
美術品を入れる黄色の袋(黃袋)はこのウコンで染められています。
私も大作には使用していますよ。
ただなかなか高価なので全作品というわけにはいかず、一部使用です。

紅絹は戦前までよく使われていた真っ赤な裏地
戦前までよく使われていた、ということは。。。
紅絹は時代考証に役立つということ。

戦前ってことなので新しくても80年弱。
もうちょっとでアンティークの域に到達するほどの貴重な代物です。

アンティークとは100年を超えたものを言います。100年未満ならアンティークとは呼ばない。
その場合、ヴィンテージが適切でしょうね。ヴィンテージにも適用される年数があって、20年前以上のものを指すようです。

戦後になると姿を消した紅絹。なくなるにもそれなりの理由があります。

・表地に色移りしやすい
・薄い色の着物だと表に赤い色がひびきやすい

それでも私の元にあるのは、今も健在な96歳の叔母のおかげ。
この叔母がたくさんお着物をくださるのだけど、彼女がくれるお着物の多くは紅絹が使われているものです。

戦前まで良く使われていた、ということで、アンティーク着物の時代考証にも役立ちます。

 

大量にしみ出す染料

紅絹は、洗えば大量に染料がしみ出ます。
紅絹だけで洗えば染料の染みだしについては問題ありませんよ。

紅絹から染み出た染料に染まる水

 

ただし手洗いする場合、ゴム手袋をした方がいいです。

指が赤く染まります。
害はないだろうけれど、この手で食事を作るとなったら私はちょっとイヤだな。。

 

染料の染みだしは紅絹に限らず、赤色の地や模様も気をつけなければなりません。
また赤色だけでなく、青や紫などの濃い色も要注意!

幾度となく失敗してきているので、動画をご覧になって↓
みんなの代わりに私がまず失敗したから。少しはお役に立てるんじゃないかしら。

 

一番上の動画で洗った昔の襦袢。
水に浸かっている時間が長ければ長いほど染料がにじみ出る

長年の経験から、見ただけで染料がにじみ出そうなものが判る。
こちらも危険信号が点いていたのに洗濯機で洗ってしまった。寒かったからね。

その結果がこれ↓

白地の部分が見事にピンクとなった

一緒に洗った胴裏まで染まってる

私はパーツとして使用するのでそれほど精神的ダメージはないけど、やはりここまで染まってしまうと少し萎えるね。

そう。洗ったら風通しの良い日陰に干してね。

 

なんだかんだ言っても、やっぱり美しいよね、この赤。

イギリス人の着物研究家シーラ・クリフさんは、この紅絹の赤に一目惚れし着物に親しみだしたそうです。

この赤には誰をも魅了する強い魔力が宿っているのかも知れませんね。

 

 

透け通るほどの薄さ

紅絹はとにかく薄い。

ガーゼ並みの薄さで、向こうが透けて見えるほど。
糸が細いから柔らかいし、とにかくきれいな光沢。

その分、力が加わるとすぐに破れてしまうものばかり。

そして、ふんわり感がすごい。

染料のにじみ出しと薄さからリメイクとして使われることがあまりない紅絹。
とても貴重なものだと解ってはいるけれど、なかなか活用方法を見いだせない方が多いみたい。

 

リメイクでは使われない紅絹

この紅絹は本当に極薄で色がにじみやすいのでリメイクにはほぼ使われません。
「今や使われなくなった」ってことはそれだけ貴重なんだよね。
作ってないってことは、もう新しい紅絹が手には入ることがない、ってことですもん。
だから、使い道が解らないから「処分する」だなんて、、、あり得ません。

ちょっと試しに「紅絹 リメイク」で検索してみた。

全くないわけじゃないけれど、「着物 リメイク」で検索するより遙かに少ない表示。
紅絹の活用にはみなさん苦労されているのかもしれませんね。

この貴重すぎる生地をどのように使おうかと思い悩むこと数年。
今の活用方法はこんな感じです↓

四隅に紅絹をふんだんに使っている。
たしか着物10枚分の紅絹がここに詰まっている。

アップで見てみようか。。

こちら↓も同じ手法で作ってる。

紅絹のリメイクをされている方がなかなかいない現状。
とことん考え抜いて自分なりのリメイク法を編み出してみてはいかが?
これぞ!と思うものを見つけ出せたら、紅絹リメイクの第一人者として活躍できるかもしれませんよ。

 

赤いからって全てが紅絹なわけではない

この紅絹。。。
赤いからって全てが紅絹だとは限らない。

時代を下っても、赤色の胴裏は実は存在している。
ただ、艶感と生地感、厚さが圧倒的に違う。

本物の紅絹

戦後の赤色の胴裏は、もっとマット感がありずっしりとした感触。
感覚的なものなので上手く説明できないけど、一瞬「これ絹?!」と思わせる見た目をしている。

あきらかに綿っぽい

 

明らかに見た目の色が違うでしょ?

本物の紅絹は黄色みがかった赤。対して、紅絹もどきは青みがかった赤。
真逆の色味です。

 

しかも生地がどう見ても綿っぽい。
そのくらい厚さがあるし、糸の太さも増している。
とにかく全然薄くない!

赤色=紅絹

が基本的な方程式だけど、たまにそれが成立しない応用編が現れるので、とにかく触りまくって少しずつ覚えてみて。