着物離れの主な理由

初めてnaomariaの作品を観る人の多くは、「なぜ着物を使うのか?」という疑問が湧いて出てくることが多いよう。

単純に柄行の美しさとしなやかな絹の質感に折れ込んだことが理由。
活動を続けるにつれ、着物が置かれている現状を知り深い想いが込み上がり、「一枚でも多くの着物を救う」という信念のもと、今は活動をしています。

 

リサイクル着物が置かれている現状は深刻

着物に興味がない方でも、着物の多くが処分されている事情を知っている。たとえそれが表面的な知識であっても、きちんと「そうなのだ」となんとなく把握できている。把握というより推測という言葉が合っているかも知れない。

 

naomaria
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毎月6~10トンもの着物が焼却処分されているとも言われています。
数に換算すれば約6,000~10,000枚。とんでもない数字です。

 

ちなみに「着物の処分されている量」で検索をかけたところ、1ページ目に

・着物の処分方法9選
・着物を処分する方法6つ!
・着物を処分する前に知っておくべき5つの方法
・着物を賢く処分する方法7選
・納得出来る着物の処分
・損しない捨て方 着物の処分方法まとめ

でした。

これだけ着物の処分に困っている方が多い、という現状に胸が痛くなりました。
「着物」「処分」というワードを盛り込んでの検索なので当然の結果なんだけどね。

▶ リサイクルショップで売れ残った着物の行く末

 

現代の衣服文化を考えれば、これだけの数の着物が処分されていうのは想像に容易い。着物というものが現代の私たちにとって、それほど生活と密接していないのかを示している。その理由には、

洋服の発展
着付ルールの厳格化
女性の社会進出

から始まり、今では

ファストファッションの流行
トレンドの細分化
物価高と収入バランス

も加わってきている。

 

 

着物離れ 従来の理由

洋服の発展

わざわざ説明しなくてもいいほどのお話し。

日常着としても着られていた着物が、今では冠婚葬祭の特別な時しか着用することがなくなってきています。その冠婚葬祭で着るシーンも随分と縮小され、親族の結婚式くらいしか見かけなくなっています。私が最近行く葬儀では着物を着られる方がいなくなりました。

 

着付ルールの厳格化

日常着として着物を着ていた時代は、とてもルールが寛容でした。
もちろん時と場合によります。冠婚葬祭や式典など公の場に出るときは、ルールを守ることが大切です。

洋装化が進み、着物が着られない人が多くなってくると、「着付教室」というものが多く広まった。
とくに組織化された教室では一番に利益が大事とされるため、「これがないと着られない」「これがあるとより楽に着られる」と買いそろえるものが膨大でお金がかかる。

着付教室でお金がかかるのはこのことも理由にある。
第一、着物がないと着付の練習なんてできないから、着付教室に通うために着物を購入する人も当然いる。

加えて「このように着ないとダメ」と教える傾向がとても強く、ルールが多すぎて習う者は萎えてしまう。高いお金を払いながら、ルールに縛られすぎて辛い思いをすれば、通うことすら苦痛となり「自分で着られなくても着付けてもらえばいい」と最終的にはなってしまう。

着付教室によるルールの厳格化により、自由で気楽に着られる洋服へとよりニーズが高まるのは必然ですね。

 

女性の社会進出

戦前は家長制度により、女性は家で家長や家族のお世話をすることが当たり前の時代でした。
敗戦し西洋の考えが取り入れられ家長制度は崩壊。少しずつ女性も働く時代となっていきます。

時代はさらに下り、1985年に男女雇用機会均等法が制定され、女性が社会に出て働くという意識が強くなりました。家業をされている家庭ではすでに女性も働いていたのだけど、続に言うOLが増えたのもこの頃でしょう。(お茶汲みのイメージがまだ強いですけどね。)

職場で着物を着る機会はほぼ皆無。着物で出社して更衣室で制服に着替えて、、、という、手間も時間もかかることを会社でするわけにはいきません。こうして社会での女性の活躍が進むにつれ、より着物離れも比例して増えていきました。

 

 

着物離れ 昨今の主な理由

ファストファッションの流行

毎週のように新作が登場するファストファッション。めまぐるしく新作が登場し、それを追いかけるブランド愛好者たちもいる。

このように短いサイクルで大量生産され販売される。そして、完売することはほぼなく在庫商品となってしまう。

安価なので飽きてしまえば捨ててしまうこともためらわずできてしまう。

手軽にファッションを楽しめることは女性に限らず嬉しいことでしょう。
自分らしいファッションがファストファッションで叶えられるのなら尚更。
あえて高価な着物に手を出す必要もない。

 

トレンドの細分化

モノも情報も豊潤な今の時代。また個性や自己表現も尊重されやすい時代。

選ぶ選択肢が格段と増えているのも理由の一つ。
驚くほどの数の洋服ブランドが存在しています。その中から自分の好きなブランドを選んだり、掛け合わせたりしてファッションを楽しむ。

洋服好きなら、これがどれほどの至福かお分かりでしょう。

着物はワンスタイルで着物自体の色や柄を楽しむ。
あとは帯や小物で色合わせを楽しむ。それだけ。でもその分、帯の締め方といった技がたくさん存在しています。

着物も同じくコーディネートを楽しめる衣服です。
ただとても粋な着方というイメージが強いので、抵抗のある方が多いのも事実。

あと「着物警察」が街中に溢れているのも、着物を着る勇気が持てない理由でもあります。
今では洋装mixで着られる方もたくさんいます。私もそのように着ることが多いです。
これが定番化するには、もう少し年数が必要ですね。
不謹慎な言い方をすれば、着物警察がいなくなるまでの年数ってことです。

 

物価高と収入バランス

コロナ禍以降、どれもこれも物価の上昇が激しく上止まりが見られません。税金も上がっている状況で、生活するにも大変な時代です。

ファッションも譲れないほど大切なものと位置づける人もたくさんいますが、人によっては優先順位は違います。

食費を削ってでもファッションにお金を投じる方も確かにいます。でもそれは生きているから、健康であるからできることであって、自分が生きるため、生活するために必要なことを優先する方が大多数を占めるのが現状です。

今、リサイクル着物も安価なものも多いので、昔に比べたら比較的簡単に和装を楽しめることができます。とはいっても、ファストファッションのような手軽さが感じられないのは、まだ認知が広まっていないからかもしれませんね。

ファストファッションよりも遙かにお安く着物を買えるお店も多いですから。
調べてみれば案外身近な場所で購入出来るかも知れません。

 

最後に

着物離れは、上記のものだけではなくいろいろな理由が複合的に絡み合って起きています。

理由はどうであれ、自分が「着物を着たい」と思ったら、遠慮なくどんどん着た方がいいです。
捨てられてしまう着物はたくさんあります。その中に自分の好みとドンピシャなモノがあるかもしれません。一日でも早く着物を着ることを始めれば、1枚しか存在しない着物との素敵な出会いにたくさん恵まれます。

プレタポルテではない、正絹の美しい着物を肌で感じ、心で楽しみ、目を潤わして下さい。