洋服の廃棄量もかなり深刻

着物に限らず洋服の廃棄も深刻です。洋服の廃棄量が増加傾向である理由に、着物離れの主な理由とも被っているものもあります。

 

衣類廃棄量は日本だけでも年間約100万トン、枚数に換算すれば33億着。これは「リユース」される率が低い証でもあります。(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

 

江戸時代までの着物は、灰となり肥料になるまで使われていました。時代は移り変わり、そこまでして着物を再利用する人はいなくなってきました。それは洋服でも同じことです。

着物と同様、不要となった洋服をリメイクしてバッグにしたり、サイズチェンジや継ぎ合わせで別の洋服に仕立てる方もいらっしゃいます。が、圧倒的に処分される量の方が多いのです。

こんな状況を深刻に捉え、私と同じように不要となった衣類を使ったアート作品を作っている方も多く見かけます。あくまで「問題定義」として留まることが多く、それ以上の大きな進展は小さく留まっている状況です。

 

衣類廃棄量が多い主な3つの理由

ファストファッションの流行

「ファストファッションの流行」は着物離れの理由にもあげました。

▶ 「着物離れの主な理由」

 

ファストファションのお店では、安価でおしゃれな洋服が頻繁に入れ替わり販売されています。流行に敏感なファッション好きな方が積極的に楽しみ、クローゼットから溢れるほど抱える方も少なくはない。着なくなった洋服は処分し、新しい洋服を迎える。その繰り返し。

大量生産・大量消費

これがこのファストファッション界で起こっている現状。

私もファストファッションを楽しみますが、流行は追わず同じモノをずっと着続けます。
そこまでファッションに重要な位置づけをしていないからかも知れませんが、確かに安くて便利なので利用する頻度はまぁまぁ高いです。

 

トレンドの細分化

「トレンドの細分化」も着物離れの理由の一つにあげました。

日本のアパレル企業の数は1万7000社ほど。これだけの数が市場の40%程を占めています。ブランドはもっと多くなります。同じ企業でもブランドをいくつか持っていますからね。

これだけ細分化されていれば、より自分好みの洋服を見つけることが容易くなる。

ちなみに細分化の理由には、与えられたモノの中から選ぶ時代からより自分らしさを追求する時代へと移り変わったことが背景にあります。つまり積極的にファッションを楽しむ時代となったため、メーカーは機会損失とならないよう、十分と見込む量を生産。売れ残れば処分、という流れになります。

 

返品商品や試着品などの返品在庫

いろいろな理由で返品された洋服は当然の如く処分対象。
試着に使われた洋服ですら、そうなる確率が高い。人が着たものを敬遠する人が多いから売れ残る。気持ちはよく解ります。

それらはショップからメーカーへと戻され、処分という道を辿ります。

 

衣類のリサイクル

リサイクルは素材を変えて違うモノに作り換えることを指します。

洋服で言えば、繊維の状態に戻しもう一度洋服を作ったり、断熱材などの他用途のものに再利用されます。

今メーカーが消費者の不要な洋服を店頭で回収しているのも、それらの素材として使用する目的もあります。生産過程で排出されるCO2を減らすための企業義務も理由の一つです。ただこのような回収をするのは大企業が多い。回収した後の仕組みや流れ、経費を考えると中小企業ではまだ難しいのかも知れません。

 

廃棄されるのは洋服だけではない

洋服が作られるまでの行程にデザインが含まれます。このデザイン時に必ず必要となるのが生地見本。「スワッチ」と呼ばれるもの。ハガキサイズからB5サイズのものが主流のようです。それを何冊も作ります。作る洋服は1枚だけではないですからね。

1シーズンだけで70リットルのゴミ袋が30~50袋も必要なくらい。シーズンが終われば廃棄します。

一般消費者がスワッチを手にすることがありませんが、それができればゴミとして処分することなく活用できる機会が増えるでしょうね。学校教育の教材として活用しているデザイン会社もあるようです。

 

衣類廃棄量を減らすべき3つの理由

当然ゴミは少ない方が良いことは理解できます。では具体的になぜ良いのかを説明します。

天然資源を有効活用するため
処分場およびそれら施設の長期利用目的
CO2削減

 

天然資源を有効活用するため

多くの洋服は石油を使って作られます。これは使われている化繊に理由があります。
洋服で使う主な化繊はポリエステル。石油を成分分解して作られます。

石油と言えば化石燃料。文字から想像できるように、動物や植物などの化石から作られています。
化石は長い年月を経て出来上がった地球の産物。当然そこには限りがあり、永続的に手に入るものではありません。だからこそ、現在代替できる燃料がないかと専門家たちが真剣に取り組んでいるんですよね。

 

処分場およびそれら施設の長期利用目的

ゴミを処分するにはそれなりの負担がかかります。ゴミが多くなればなるほど、それらを焼却する設備は使用され続けます。そうなると消耗が激しく寿命が必然的に短くなります。

実際地元の焼却処分場では炉が壊れ、ゴミ出しの制限を市民に何度もお願いしていました。そういったことが起こらないためにも、設備の負荷軽減が大事となります。

つまりゴミの量を減らすことが大事

それができれば、長期利用は当然のこと、メンテナンスの頻度も減り、コスト減に繋がり、支払う税金も少なくなるかもしれません。

 

CO2削減

地球温暖化は世界的な問題であり、各国が真剣に取り組んでいる問題の一つでもあります。

トランプ前大統領が離脱を決し、バイデン大統領が復帰を表明したパリ協定と言えば、なんとなく知っている方もいるでしょう。簡単に言ってしまえば、2015年に「世界各国が真剣にCO2削減に取り組みましょう」というルール作りをしたのがパリ協定。

5年ごとの見直し・評価により日本は苦しい立場に置かれ、当時の管首相が「2050年までのカーボンニュートラル実現」を表明。それ以降、TVや雑誌などでSDGsという言葉が溢れるようになりました。

いずれにしても地球温暖化が原因とされる自然災害も甚大なものになりつつある中で、CO2削減に取り組むことは早急に必要な事案。企業としては、利益を存続させながら生産も販売も現状からシフトしていく努力は本当に過酷だと思います。でもやらなくてはならないんですよね。世界ルールですから。

 

私たち個人が衣類廃棄を減らすためにできること

私たち一人一人が減らせる衣類廃棄量は地球規模で見たら微々たるものかも知れないけれど、結束すればものすごい効果になります。

そのために

安易に買わない
何度も大切に着ること
メーカーの回収サービスを利用する
ゴミとならないリメイクをする

特に最後の「ゴミとならないリメイクをする」は、いらない・使わないようなモノへのリメイクはしない、ということ。結局ゴミになるわけですからね。

 

最後に

着物より洋服の方がより密接なので、洋服の廃棄量の深刻さを感じて下さる方もいらっしゃるでしょう。これから洋服を購入するとき、少しでも今回のお話しがお役に立てたら嬉しいです。みなさんの一つ一つの心がけが、いずれ次世代が住む安心安全で資源豊かな地球へと繋がります。