コラージュとは? ~定義と基本的な作り方~

私naomariaは「着物コラージュアーティスト」として2015年から活動をしています。初めて作品を展示するに当たり、便宜上「コラージュ」と謳っていますが、実際のところ違和感があります。

というのも、厳密に言うと「コラージュ」ではない、という感覚だからです。その展示会のオーガナイザーもカテゴライズが難しいと言っていたほど、唯一無二の手法なのです。

では「コラージュ」とは何なのでしょうか?

ここでは簡単に説明をしたいと思います。誕生や歴史などより深い話はご自身でお調べください。一般的な知識の範疇でお話ししますので、ご理解ください。

 

コラージュの定義

コラージュ(collage)はフランス語。「糊付け」という意味で、絵画技法の一つです。複数の紙片などを貼り合わせ表現するため、描画とは異なる手法になります。

キュビズム時代(20世紀初め頃)に、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックらが始めたと言われています。キュビズムとは、さまざまな角度から見たモチーフを一枚のキャンバスに収める方法で、多くの方が思い描くピカソの絵もこれにあたるものかも知れません。

ピカソ『ゲルニカ』

この頃ピカソらは、新たな表現方法であるキュビズム作品を制作する過程で紙などを使った創作もやっていたそう。パピエ・コレとも呼ばれている手法で、コラージュの原点とも言われています。

パピエ・コレとはフランス語で「糊付けされた紙」という意味。紙片にはさまざまな種類があり、それら全てが該当。

これらから想像できるとおり、「紙片等を糊で貼り付けする」描画方法をコラージュと呼んでいます。また、今では素材は紙に限らず多岐に渡っており、貼るだけではなくピンで留めるなどの方法も定義に含まれています。

 

コラージュはこんな人に向いている!

絵を描くのは得意ではないが「作品で自己表現をしたい」「何か創りたい」と思う方はいらっしゃるでしょう。それはもしかしたらあなたかも知れません。そして、間違いなく私はそんな一人です。

私は絵を描くことに苦手意識を抱いたままです。そんな人でも楽しめるのがコラージュ。それは素材を自由に寄せ集め一つに仕上げていくスタイルが所以かもしれません。

本来良し悪しはないのですが、残念ながら絵画はそのようにジャッジされやすい技法です。コラージュはそのジャッジラインが曖昧となり観る者の許容範囲が格段と広がる不思議なアート。だからこそ絵が得意ではないが作品で自己表現したい方には最適な技法ではないかと感じます。

 

コラージュに使われる素材

現在コラージュに使われている主な素材を下記に列挙します。

紙類

雑誌、新聞、広告、包装紙、折り紙、デザインペーパー、ダンボール、お菓子などのパッケージ、写真、レシート、切符、切手、プライスタグ、ショップカード、ポストカード、レースペーパー、ペーパーナプキン、デコパッチ、紙袋、ぽち袋、祝儀袋、封筒、型で抜いたもの、カラーコピーしたもの、子どもが描いた絵、自分が描いた作品 など

 

布類

洋服やバッグなどの生地、テーブルクロス・ベッドカバーなどのインテリアファブリック、裂織りなど自分で織ったもの など

 

手芸材料

フェルト、レース、皮革、リボン、毛糸、刺繍糸、チェーンブレード、ボタン、ファスナー など

 

木類・植物

流木、木片、割り箸、木の実、ドライフラワー、造花 など

 

ガラス・陶器類

シーグラス、割れたカップやお皿、タイル など

 

その他

貝殻、石、アルミホイル、釘、ボルト、網、プチプチ、書き込みが失敗したCD/DVDディスク、使わないまま置いてある不要品 など

【不要品の例】
鉛筆、ペン、消しゴム、メモ帳、ノート、お菓子のおまけ、ノベルティー、過去収集していたもの、古い道具類 など

 

現在よく見られるコラージュの種類

どの分野においても多岐に渡ったものが多く存在しています。コラージュにおいても例外ではありません。コラージュという定義が曖昧になってきていることもありますが、それだけ表現方法に制限がないという証でもあります。

現在よく見られるコラージュは大きく分けて4つあると考えています。

従来のパピエ・コレ(王道なコラージュスタイル)
さまざまな素材を使ったミクストメディア
プリント/現像した写真をおしゃれに見せるためのスクラップブッキング
アプリなどを使って複数の写真を配置するデジタルコラージュ

 

日本の作家の間では、シャビーなデザイン紙やシール・レースリボンなどを使ったコラージュが人気で、SNSで「コラージュ」と検索するとよく見かけます。スクラップブッキングもコラージュの要素をたくさん兼ね備えた創作技法です。

スマホの写真アプリにも「コラージュ」があり、複数の写真を寄せ集めて1枚の写真に仕上げられますよね。それと同じ感覚です。ただここで言うコラージュとは、データ上で創作するのではなく、実際に手にすることができるマテリアルを使って創作するフィジカルなものです。

 

ちぎり絵もコラージュに含まれそうですが、手法的には同じ概念であっても、作品を作る上でのセオリーがコラージュ(アート)に反するようで、人によっては除外する場合があります。

コラージュは、それぞれの要素を保ちながらメッセージ性を備えた一つの作品を作るもの。ちぎり絵は、素材を小さくちぎり一つの”モチーフ”を仕上げていくことが目的となっています。故に、メッセージ性を伴うことがアートだという概念から外れるため、ちぎり絵はコラージュに類されないことがほとんどです。

 

基本的なコラージュの作り方

コラージュはその定義どおり素材を糊付けしていく手法です。紙であれば切ったりちぎったりして土台に貼り付けます。素材同士をレイヤーのように重ねない場合は、土台の上に置いた配置どおりに糊で定着。素材を幾層か重ね奥行きを出す場合は、一番下の層から貼り付けていきます。このとき素材の位置が仮置きのときとズレやすくなります。細かなことを気にしない方はそれで良いのですが、しっかりと位置を決めたい場合は、印を付けるなどして慎重に糊付け作業を行っていきます。

 

コラージュ作品制作の基本的な流れ

コラージュを作るには基本的な流れがあります。コラージュに限らず、どんな作品を創る上でも大切な過程が1番目です。

1.伝えたいテーマを決める
2.イメージを膨らませる
3.テーマに合った素材を集め切り抜く
4.素材を仮置きし配置を決める
5.土台に糊付け
6.加工や装飾を加える

 

テーマは難しく考えず、ふと思いついたワードでも良いですし、日頃から思っていることや好きなもの・こと(ネコや犬などの動物、推し、色etc.)でも良いです。また一つではなく組み合わせたものでもOK。

それでもどうしてもテーマ設定に難しさを感じてしまう場合は、何も考えず思うがまま作ってみましょう。何度か繰り返していくうちに、自分の好きな手法やテイスト、テーマが湧き上がってきます。それが自分の得意や特性・個性となり自分らしさが仕上がってきます。焦らずじっくりゆっくり楽しんでください。

 

何よりも楽しみながら続けること

継続していれば自然と「もっとこうしたい」「こういうテイストが好き」「この素材感が好き」などという、より具体的な願望や好みが顔を出してきます。その時がブラッシュアップのチャンス。ブラッシュアップとは、技術・センス・効率の向上を指します。もちろん一夜にして劇的に磨かれるものではありません。発展途上の状態には辛さや苦しさを伴う時もありますが、やり続けた1年後を想像しながら創作を楽しみましょう。継続していれば必ず成長しているはずですから。そして、ブラッシュアップのタイミングが来るまではラフに楽しんで下さい。

段階毎に向き合う姿勢は自然と変化していきます。それは当然の流れです。アマチュア選手とオリンピック選手が向き合う課題と心構え、ポテンシャルが異なることを想像してもらえればご理解頂けるでしょう。

どんなときも楽しむ気持ちを忘れずに。

 

発展的な作り方(ミクストメディア)

立体的な素材や複数の素材を使いコラージュすることも可能です。この場合、使用する接着剤は素材との相性をしっかり考慮しなくてはいけません。接着剤に関しては「コラージュ用の糊を選ぶ時の注意点」で説明しています。

 

異素材の組み合わせ例

自分の作品同士を組み合わせることも一つの案ですが、もっと簡単に制作出来る方法があります。

紙×皮革
紙×布
紙×ガラス
お菓子の箱×おもちゃ
布×ぬいぐるみ など

自分の好きなものを寄せ集め貼り付けていくことから始めてみると、既成概念なく自由な作品作りがしやすいのでオススメです。自分の宝箱を創るイメージでまずはチャレンジしてみて。