反物にする
織り染めたもの(染め織ったもの)を着物に仕立てるため、反物という状態にします。
反物は円筒の芯に巻かれています。
着物一着分に必要な生地を着物一反と呼び、平均して幅約36cm(9寸5分)、長さ約12m(3丈)です。この長さから三丈物(さんじょうもの)とも呼ばれています。
この反物に仕上げるまでにも膨大な数の職人さんが携わっています。
糸を紡ぎ生地に織る。
織ったものを(または糸の段階で)染める染色家。
染色をきれいに洗い落とし湯のしを掛け地直しする職人などなど。
このような簡単な説明では足りないほどです。
着物は分業制で作られます。
それぞれの工程のプロが、長い歴史を通じて伝承されてきた知恵や工夫、そして技術を大いに振るいながらお仕事をされています。
一見「たった一枚」の生地でしょうが、どのようにして仕上がったかを知れば知るほど重みを感じる「されど一枚」へと見え方が変わります。
反物を裁断する
幅約36cm×長さ12mという細長い一枚の生地を直線にカットするだけで、着物の部位を準備できます。
反物は上図の”着物”部分。
八掛や胴裏は別の生地で準備します。
胴裏は羽二重が一般的に用いられます。
八掛は幅36cm、長さ約4mの一枚布を上図のように切り分け胴裏と縫い合わせ裏地に使います。
着物は洋服で言うオートクチュール。
マイサイズで作って頂ける日本で最高級の衣服ではないかと感じます。
ほどくと解る着物のつくり
一度解いてみれば着物のつくりをより理解することができるでしょう。
着るには着られない着物やリサイクルショップで安い着物を一枚購入し解いてみるのもいいですね。
単衣ではなく袷着物(裏地のあるきもの)をチョイスすることがポイントです。
解く順番は、仕立てられた逆順。
まずは衿から解いていきます。そのあと衿下を解き表地と裏地を離す。
衽、身頃を解き、最後は袖です。
ただし、自分で仕立てものや職人さんによっては違う順番で仕立てられていることがあります。
①衿と褄下(衿下)を解く
②表地と裏地を留めている部分を解く(しつけ糸のようなものでざっくりと留められています)
③裾、袖つけ、身八つ口を解き表地と裏地を離す
④身頃部分を解く(背縫い、脇縫い、衽)
⑤袖部分を解く(袖下部、袖口)
着物を仕立てる順番
①袖
②袖と身頃
③身頃
④衽
⑤同様に裏地
⑥表地と裏地を縫い合わせる
⑦衿
となります。
ただ先ほども言ったように、仕立てる人によって順番は前後します。
和裁を本格的に学んでいる方の中には意見したい方もいらっしゃるかもしれませんが、2015年から何十枚もの着物を解いてきた実体験としてお話ししています。
その経験から、全てが教科書どおりではないと言うことを身をもって感じています。
どうしても気になる方は和裁の本をご参考下さい。
私は必要としないものなので、お勧めできる本は分かりかねます。ご了承を。。
着物の完成
自分サイズで作ってもらった着物がいよいよ完成!
どのような帯を、小物を合わせるのか。楽しみでならないですね。
こに到達するまでの道のりはとても長い。
生地から着物へ仕立てられるのはもちろん、生地になる前までの流れが目に見えない分、想像を絶するような世界と時間が広がっている。
時空を超えて目の前に現れる1枚の着物。
この一枚の着物の向こう側には言葉にならない歴史と命が存在していることを思うと、そう簡単には処分できやしないですよね。
最後に…
全7回に渡りお伝えしてきた「一枚の着物ができあがるまで」。いかがでしたでしょうか?
よりアカデミックな内容になると、専門的すぎて網羅しなければならない範囲がグンと広がるほど、着物は奥が深い世界です。
ここではあくまで知るきっかけとなれば、と思い、解りやすく端的に説明してきたつもりです。
これを機に着物について調べてみよう、着てみよう、再利用してみよう、など、今まで思ったこともない新しい心の動きがあったのなら幸いです。
大量の衣料廃棄問題は着物に限ったことではありませんし、日本だけの話ではありません。
5世代先までまかなえるほどの衣料がこの地球上には存在している、とも言われるほど有り余っている不要衣料。
着物も毎月6トン以上が処分(焼却)されているとも言われています。
新たな物を生み出すことも大事ですが、今あるものをどのように活かし資源を守るか、環境を守るか、ひいては地球を美しい星のまま護っていくのか。
それが今試されているのではないでしょうか。
私たちの腕の見せ所ですね。
【一枚の着物ができあがるまで】#1 ~全てはここから:お蚕編~
【一枚の着物ができあがるまで】#2 ~全てはここから:生糸編~
【一枚の着物ができあがるまで】#3 〜全てはここから:紬糸編〜
【一枚の着物ができあがるまで】#4 ~全てはここから:その他の糸~
【一枚の着物ができあがるまで】#5 生地(染めと織り)
【一枚の着物ができあがるまで】#6 染め
【一枚の着物ができあがるまで】#7 着物を仕立てる