絹以外で着物によく使われるもの
着物の多くは絹で作られていますが、他に木綿、麻、ウール、化繊などがあります。
今では化繊で作られたプレタポルテも大変人気で、若いデザイナーが活躍されています。
絹は高価である上に扱いが大変であることに加え、若いデザイナーならではのデザイン性で、特に若い世代に受け入れられています。
木綿
木綿は「綿」。コットンです。
木綿の着物は室町時代から姿を現し発展しますが、最初の日本への木綿伝来は799年にまで遡ります。
三河国に漂着した中国人によりもたらされました。このとき日本での栽培は困難を要し、あっという間に立ち消えに。
16世紀以降、ようやく全国で一般的に栽培されるようになりました。
その間木綿は輸入に頼っていたので高級品でした。
綿繊維は肌触り、着心地、快適感に優れ、着物では日常着や浴衣などによく使われています。
つまりカジュアルな和服です。
吸湿性は8~12%。吸水性も良いので汗を吸い衛生的。
浴衣に向いているのも解りますね。
絹とは違いご自宅で洗濯も出来ます。
ただ洗濯をすると縮みやすいという欠点がありますが、今では防縮加工をされているものもあります。
綿は紡績され繊維となり織物へと姿を変えます。
特に伊勢木綿などが有名で、縞や格子柄が多いのも特徴。
また、まだらに染めた絣糸(かすりいと)で模様を織り上げる絣柄も有名です。
絣模様は、まずデザイン画を基に糸を染めます。
この染め分けた糸で織ることにより生地全体に文様が出来上がる根気のいる織物の一つ。
直線的な幾何学模様や絵画的な絵模様があります。
伊勢木綿、会津木綿、久留米絣、備後絣、弓浜絣、伊予絣、長板中形、唐桟織(とうざんおり)、有松・鳴海絞り、阿波しじら
麻
夏によく着られる着物に麻があります。麻糸を平織りしたのが上布(上布)。
細い麻糸を使っているためとても薄手で上質な織物です。苧麻(ちょま)※1が原料。
※1 イラクサ科の多年草。原野にみられ、高さ1~2m。茎は木質。この茎部分(靱皮[じんぴ])から繊維をとって織物にする。
※縮(ちぢみ):素材は絹、木綿、麻など。強く撚った糸で織るため、表面に細かいしぼがあるのが特徴。
ウール
ウールは洋服でもよく使われているので、イメージが付きやすいかと思います。
ウールは保温性が最も優れている繊維。
冬にウールの洋服を着ると温かいですよね。着物も同じく寒い季節によく着られます。
木綿と同様、カジュアル着物に類するため、TPOに応じて着ることが大事です。
ウール着物は単衣であつらえます。
※単衣(ひとえ):裏地のない着物
羊毛は紡績する前に染色されます。毛刈りをした後、洗毛。
その後、染色をしハンドカードという染めたバラ毛を何十色も混ぜ合わせて色を調合。
こうしてようやく糸紡ぎが始まります。
ウールは特に虫食いが多い生地。
絹の着物とは別に保管することがとても大事です。
優佳良織(ゆうからおり)
化繊
着物でよく使われる化繊はポリエステル。
石油や石炭、天然ガスを原料として人工的に作った化学繊維です。
ナイロンに次いで強度に優れています。
濡れているときでも強度は変わらないため、「洗える着物」として販売されています。
ただ吸湿性は0.4%とかなり低いため、日本のような高温多湿の夏では快適さが損なわれます。
最近のポリエステルには、技術発展により天然繊維の風合いとよく似たものがあります。
それでも安価なポリエステル着物は、表面がつるりと滑りやすいものがほとんどなので着づらいです。特に初心者にとっては着こなすまでが大変かも知れません。
次回は。。。
いよいよ生地について、です。
【一枚の着物ができあがるまで】#1 ~全てはここから:お蚕編~
【一枚の着物ができあがるまで】#2 ~全てはここから:生糸編~
【一枚の着物ができあがるまで】#3 〜全てはここから:紬糸編〜
【一枚の着物ができあがるまで】#4 ~全てはここから:その他の糸~
【一枚の着物ができあがるまで】#5 生地(染めと織り)
【一枚の着物ができあがるまで】#6 染め
【一枚の着物ができあがるまで】#7 着物を仕立てる