個展の決まり方と決定後の流れ

個展会場へご来場頂く方々や友人などによく聞かれることがあります。

どうやってここで個展するって決まったの?

当事者なのでなんとも思っていなかったけれど、結構多く寄せられる質問なので、個展が決まるまでと決定から開催までの流れを説明しようと思います。

 

個展開催の決定には2通り

個展開催が決定するには大きく分けて2通りあります。

1. 自分からアプローチ
2. オファーをいただく

 

naomariaがこれまで開催した主な個展では、

東京のギャラリー → 自分から
久保田一竹美術館 → 自分から
有形文化財商家駒屋 → ご依頼
ニューヨークチェルシー → ご依頼
鷹通寺 → ご依頼
磐田市新造形創造館 → ご依頼

このように決まっています。

 

初個展in東京が決定した流れ

特に活動初期は、自分のことを知らない人ばかりなので自分からアクションを起こさないと始まりません

私が着物コラージュアーティストとして活動しだした頃は、以前のプリザーブドフラワーデザイナーとして活動していたこともあり、お声がけはありました。

が、自分の中で、カフェギャラリーでの展示は「違う」と感じていたので、一から開拓しないといけない状態。しかも、地元の愛知ではなく「東京」と考えていたので尚更です。

 

知人が東京で個展をするというので、作品を持って会場へ向かいました。
彼のお話によると、ギャラリーと関係のない方は展示できないと。

都内でどこか展示ができるギャラリーを紹介してもらおうと尋ねると、「他でやる必要はない、うちでやったら?」と仰って頂き、着物コラージュアートとして、東京で初めての個展が叶いました。

ギャラリースタッフとはアポを取っていなかったけれど、ギャラリーから厚い信頼を受けている知人のおかげで、快く個展開催を引き受けて下さいました。

▶『2016.5 ミリオンアートスペース

 

久保田一竹美術館

次の個展は久保田一竹美術館。

ここは、東京での個展で来場頂いた方から「一竹美術館でやったら?」というお声に始まり、個展直前に見たTV特集、知人がそこで個展をやっていたこともあり、問い合わせしました。

実際に作品を見てもらいお話をし決定。
こちらも自分からアプローチして決まったものです。

▶『2017.3 久保田一竹美術館

 

オファーは芋づる式

以降の個展は全てオファーです。

有形文化財商家駒屋さん。
ここの企画担当者が一竹美術館についてよく知っておられ、「そこでやるならうちでも」と、年末年始展という一年で最大の展示に抜擢されました。

ニューヨークでは所属アートグループからのオファー。
お寺さんでは、駒屋さんでの展示を観てのオファー。
磐田市新造形創造館は、私の活動を知った高校の先輩からのオファー。

動き出すと、あるときから芋づる方式のように決まり始めます。

 

開催決定の後は柱作り

開催が決定したら次にやること。

どのような展示にするのかを決める

つまり、テーマやコンセプトの決定です。

どんな展示にしたいのか
どれだけ多くの人に観てもらいたいのか、伝えたいのか

そんなことを考えたら、しっかり創り上げていかなければなりません。
展示を通して、作者の人となりが現われます。

趣味の一環なら構わない自由にすれば良いです。

がっつり活動していきたいのなら、柱をしっかり作っておかないと、その上に建つ構造物は簡単に崩れ落ちる。

 

観てくださる方は、もともと”そういうもの”に興味のある人たちが多い。
つまり目が肥えている。見せ方も良く見ている。良くも悪くも、

伝わってしまうんです。

どれほどの気合いでその展示に向き合っているかが。
本気で活動したいなら、この柱作りに一番時間をかけないといけない。

 

タイトル・テーマ、展示内容の決定

タイトルやテーマは比較的簡単に決まることが多いと思うので、あえて説明しません。
自分の内から湧き上がるものを大切に決めて下さい。

媒体を使って宣伝する場合やフライヤー(個展お知らせのハガキ↓)を作るのにも必要です。

その時々によって異なるけど、開催の2〜3カ月前までには内容を決定し入稿しないと間に合わない。

この期間を切っての決定はかなりハードです。私の場合。
それを切ってのオファーは断ります。

 

テーマ、コンセプトの違い

「テーマ」と同時によく使われる「コンセプト」という言葉。それぞれの持つ意味は、

テーマ=登る山
コンセプト=ルート

 

2022年のこちらの展示。

テーマ『Core』(コア、核、軸)
コンセプト:ロックミュージック

自分の軸となるコアがどれほど大切かを痛感したこの頃。
そのコアが何か?と聞かれれば、疑いもなく「音楽(ロック)」だと言える。
自分の好きな音楽を表現しながら「コア」を訴えていく、というのが、この展示の目的であり目標でした。

 

平面図に起こす

会場毎に規模はもちろん環境も異なります。
打合せの時点でしっかり確認し、必要であれば採寸。図面を頂けたらそれを活用する。

採寸したものを平面図に起こし、展示内容を書き加えていく。

・レイアウト
・展示方法
・作品サイズ

など、必要な情報を書き込み、全体のバランスや鑑賞の流れを見る。
平面図の縮小率に合わせた作品写真を一緒に付け加えると分かりやすい。

これは搬入時にも役立つ。

どこにどう展示するのかが決まっているので、レイアウトに従い作品を配置し、あとは飾りつけるだけ。

現地で決めてると時間はびっくりするほどかかり、ただただ疲れるだけになる。

事前準備はとにかく必須。事前準備が結果を左右すると言っても過言ではない。

 

メインビジュアルの制作

個展を開催するにあたり「宣伝」は当然のようにするでしょう。
そのときに使う写真がメインビジュアル。展示のテーマやコンセプトを物語るものとなります。

このメインビジュアルを見て「観たい」と思ってもらわなければいけません。

テーマもコンセプトも決まっていなければ、メインビジュアルの創り上げも中途半端になります。

ここで使う作品は特に力を入れる作家さんが多いのも事実。
それだけ重要だということを良く解っているという証拠ですね。

 

作品作りとディスプレイ準備

決めたテーマやコンセプトにそって作品を作ります。
完成した作品をどのように”魅せる”かも同時に考えます。ディスプレイです。
それに必要な備品も揃え、作品が一番美しく見えるための努力をします。

制作過程は見せられる範囲で動画に撮り、SNS等で随時お知らせしておく。
時間をかけじっくりと興味付けができるので、個展へ足を運んで下さる可能性が高まります。

 

販売できる場合はグッズも準備する

ほぼ販売OKですが、自治体が絡むと販売ができない場合があります。
そのときは工夫して収入に繋がるようにアイデアを練ります。

私の場合、購入ページのQRコードを載せた作品一覧表を設置し配布しています。
在廊中にお声がけいただければその場で対応。
ショップの在庫管理をし購入が重複しないようにします。

 

販売OKなら、グッズの準備。また手頃な価格で購入出来る作品作りもします。

グッズのパッケージングも大事です。
アートグッズはお値段が高めの設定が多い。高いのに雑な扱いをされていたら買う気が失せるよね。

見る人によっては「自分の作品をこんな扱いしてるんだ」と思ってしまうかも知れません。
そんなジャッジは命取り。作品もグッズも全て自分の分身。自分が扱われたいように大切にパッケージングしましょう。

 

キャプションづくり

最初に決めたテーマやコンセプト、そして作品それぞれに宿るさまざまな想いがありますよね。

自分が常に在廊していれば口で説明できるけど、全ての来場者に対応できるわけでもなく、自分がいない時なんて誰も対応してもらえません。

そこで必要なのがキャプション

タイトルや制作年、価格などしか書かれていないものがほとんどだと思います。
展示スペースや会場側の意向で、それしか掲載出来ない場合もあります。

スペース上、意向上展示できないなら、別紙で説明するかブログなどに誘導するよう工夫する。

作品誕生の背景やテーマなどを書き添えるだけで、作品を観る者の目に奥行きが生まれるのでおすすめです。

 

最後の準備

作品キャプションやポップなどの掲示物の準備も万全に。
梱包をしながら、作品の最終チェックも欠かさない。

これらが全てじゃないけど、もう一度基本的な流れをまとめます。

・場所決定
・テーマ、コンセプト、展示内容の決定
・平面図を起こす
・メインビジュアルを制作
・フライヤー(DM)制作
・その他作品を制作
・キャプション、POPなど展示備品を準備
・最終チェック

 

ディスプレイの最終チェック

何をどのように展示するのか。
制作しながら頭の中で湧いてたイメージを形にして確認していきます。

 

立面図

平面図をもとに立面図を作り作品画像をはめるとイメージが付きやすくなります。
私はPC上でその作業をやります。

 

写真

平台に置く作品の場合は、実際に並べて写真を撮る。
それを見ることで、客観的に確認することができます。

 

目に見えない部分が大半の世界

作品を作ったので発表会します!のとは訳が違う個展。

本気であればあるほど念入りな準備が必要となる。
それは目に見えない部分。壁に隠れている柱や基礎のようなもの。
そこがしっかりしているから、インテリアを美しくい彩ることができる。

 

私は「作品があるから展示会をする」というスタンスではないので、作品を作る以外に、この目に見えない部分の準備にも力を注ぐ。

これは”安心感”の確保でもある。

まとまりのない展示会に来る人たちの反応、、、いかなるものか。想像しただけでも怖い。

時間と労力とお金を使って観に来て頂く以上、満足して帰っていただきたい。
そのためにも準備を怠らず、全力を尽くして出迎える。

「ここまでやった」という事実が、いかなる来場者の反応も受け容れることができ、むやみに落ち込んだり凹んだりすることもなくなる。

そのための安心材料。もちろん達成感も半端ない。

 

最後に

これらの流れは、naomariaが個展開催までやってきた主なことです。

人が変わればやり方も変わりますが、基本は同じ流れだと思います。
この流れを参考に、自分なりのやりやすい順序や方法を試してください。