2018年9月にニューヨークで個展を開催。
オープニングパーティーに合わせて渡米しました。
スケジュールの都合で、搬入・設営は携われず(図面で展示の指示は出していた)。
搬出の時は私もしっかり作業をしました。
この搬出作業中この個展を企画してくれたスタッフと話をしていたとき、思いがけない本音を聞いてしまった。。。
ギャラリストの本音「過剰梱包が多い」
作品を守りたい気持ちは分かるが、たくさんの作品を展示する側としては、しっかりと作品を守りながらも、手間のかからない梱包なら開梱の作業時間が圧倒的に短縮され、その分、設置に時間を十分かけられる。
確かにその通りだと思った。
私は昔、別の団体のグループ展で梱包の仕方を教わっていた。
以来これ↑を実践している。
梱包の仕方だけではない。
作品一つ一つに対する配慮も行っている(後述)。
ニューヨークへ作品を送った際も、同じ方法で。
これが、スタッフたちにとても好評だった。
これだけしっかりしていて、かつ、簡単な梱包だと本当に助かる!
作品を作るのは他ならぬアーティスト自身。
作品を展示するのは、ギャラリストやアートチームの第三者。
ギャラリストやアートチームの方たちに好印象を与えるには、こうした梱包の仕方まで、いかに気が使われているかが大事なのだとか。
実際、ギャラリストの多くは、作品以上にこうした心配りに目を向けているし、重要視する。
去年日本で行われた某アートショーのトークショーでも同じことを話していた。
作品を入れる箱にも着目する。
大事な作品の扱い方をそれとなく知れるので、そこから創作活動に対する姿勢を見出すのだとか。
細部に神は宿る
というのは私の中で大事にしている言葉なんだけど、本当にその通りだと思う。
人の想いや考え方は行動になって現れる。
それらの結果が目に見える形となって現れる。
作品だったり、梱包だったり、作品を入れる箱だったり。
本気でアーティストとして自立したいなら、そこは最低限やるべきこと。
人は見ていないようでよく見ている。
何も言わないけれど、それぞれの中でそれぞれを判断を下している。
ギャラリストや主催者に喜んでもらえる梱包とは?
ここから私がニューヨーク個展で喜ばれた梱包の仕方をお教えします。
額作品が多いけれど、立体作品も基本同じだと考えます。
作品を梱包する時の注意点
・(額)作品を入れる向きに注意する。
・必要以上の緩衝材は入れない。
梱包BOXを作るために必要なもの
・段ボール ※必要サイズは下記参照
・ガムテープ(布タイプ)
・両面テープ(10mm幅)
・緩衝材(プチプチなど)
・ビニール袋
・ビニール紐
・カッター
・カッティングボード
・定規(アルミ製が理想)
・目打ち
・セロハンテープ
作品を入れる箱を段ボールで作る
手順は以下の通り。
実際のやり方と少し違いがありますが、写真を合わせて掲載しますのでご参考ください。
作品を一つにまとめ、幅(W)×奥行(D)×高さ(H)を測る
一番コンパクトになるまとめかたで測る。
作品が入っている箱を紐で縛りたい場合は、縛ってから測る。
一度ぐるりと紐を渡してから、両端を渡した紐の下にくぐらせる。
ここでいきなりリボン結びをする。(一度縛ってからだと開梱時、解きにくい)
測った寸法にそれぞれ1.5~2cm足す
プラスするサイズは、使う段ボールと緩衝材の厚さにより異なります。
あくまで目安です。
心配であれば、最初は余裕を持って+2cmで作ってみましょう。
何度も作っていくうちに、どのくらい余裕を持たせたらいいのか分かるようになります。
見取り図を参考に段ボール(内側)に印を付けていく
このとき、寸法は1.5cm/2cm加算しなくて良い。
印通りカットする
・カッターを使用する際は、必ずカッティングボードの上で行って下さい。
・ピンクの線部分に切り込みを入れるのを忘れずに。
・定規を充てながらカットしていくと、作業しやすい。
・谷折り部分は、目打ちなどで筋を付けると折りやすい。このときも定規を充てながらがオススメ。
プチプチを胴体内側(黄緑斜線部分)に貼っていく
両面テープの貼り方↓
両面テープの剥離紙を少しずつ剥がしながら、プチプチをたわませないように貼る。
のりしろ部分(表側)に両面テープを貼り、のりしろ部分が胴体の内側に来るよう重ね、貼り合わせる
重ね合わせたところを覆うように、段ボールの外側と内側をしっかりガムテープで貼る
底を組み立てる
真ん中にガムテープを1回貼るだけでは不安なら、全体に貼る。
中に入れる底用と蓋用の段ボールにプチプチを貼る
・裏面に折り込んで貼るので、のりしろは両面テープの幅以上にする
・角は斜めにカット
一辺を貼る。
角を少し折り込みながら残りの辺を折るときれいに貼れる。
落とし込む底用の段ボール裏側に両面テープを4辺貼り落とし込む
このときしっかり段ボール底面にくっつかなくても大丈夫。
作品を入れた際、重さでしっかり圧着してくれます。
作品を入れサイズを確認し、緩衝材を作る
作品が入ればそのまま続行。入らなければ、一から作り直します。
合わなかったBOXは、せっかく作ったのでそのまま残しておいて。
今後役立つことがあるかも知れません。
買い物したときに入っている緩衝材を再利用するのもOK。
なければ、プチプチを折りたたんだものをまとめてビニール袋に入れると、取り出すとき散らばらず、かつ、再利用できる緩衝材となります。
このときビニール袋の口はセロハンテープで閉じます。
蓋用の段ボール(プチプチが下)を置き、蓋をガムテープで閉じる
以上です。いかがでしたか?参考になりましたか?
こちらを基本に、ご自分のやりやすいようにアレンジしてください。
梱包BOXをアレンジして作るときの注意点!
(額)作品を入れる向きに注意する。
必要以上の緩衝材は入れない。
一番初めにも書いたことです。
作品サイズよりも大幅にサイズアップすれば、たくさんの緩衝材が必要となる上に、作品が箱の中で動き回ります。
ジャストフィットだと作品に無駄な動きが生まれないので、最低限の緩衝材だけで済みます。
重さとサイズ
これは発送する際にとても大事なポイントです。
何度も発送している方ならおわかり頂けると思います。
EMSで発送する場合、重さで送料が決まります。(ヤマト便はサイズでした)
アトリエで計ったら3.5kg。
郵便局で測ったら。。。
この金額です。
分かります?とにかく金額が高いの。。。
だったら、余計なものは入れず、少しでも送料安くした方がいいよね!ってことです。
ちなみに、金額はこんな感じ↓
現在は、コロナや燃油高の影響により1.5~2倍は値上がりしています。
よりコンパクトに送る工夫が大事だというのが、より身に染みて感じるかと思います。
おまけ
これでもやっぱり不安で、お金がかかってもいい!という方に…
自転車が入っていたダンボールをご活用ください。
かなり丈夫です。が、少し重量が増します。
自転車屋さんでいただけます。
事情をきちんと説明すれば、だいたい快くいただけるはずです。
これで国内に送るとき、ヤマトのお兄さんに絶賛されました。
海外向け伝票の書き方
これでもう梱包はバッチリだよね!?
あとは、発送するだけ!
と言っても、伝票を書かなくてはなりません。
日本からなら、荷物の追跡が出来るもので一番安いのがEMS。
指定があれば従わなければなりませんが、そうでなければEMSを利用するのがオススメです。
EMS(国際スピード郵便)
以前は手書き伝票でOKでしたが、2021年1月1日より専用宛名ラベルでないと発送ができなくなりました。
これはアメリカの法律「STOP Act」の施行に伴うものです。
ヨーロッパでも同じように専用ラベルが原則となるだろう、と当時郵便局員さんに言われました。
どこの国へもこのサービスで送れるよう、準備を整えておく必要があるかもしれませんね。
国際郵便マイページサービスは登録しないと利用できず、荷物は基本受け付けてくれません。
このシステムでは、オンライン上でインボイスと伝票を作成しプリントアウトすることが決まりとなっています。
パソコンが得意ではない方、そもそも持っていない方もいらっしゃるでしょう。
その場合は窓口でも対応してくれます。
が、手書きがアウトとなった今、窓口でも専用機械に情報を読み込ませなくてはならないので、慣れない方にはかないハードルが上がった印象です。
国際郵便マイページの使い方はオフィシャルサイトの説明を参考にして下さい。
住所を英語で書く
英語で住所を書く場合、日本語表記の逆から書きます。
〒460-0031 愛知県名古屋市中区本丸1番1号
↓
1-1 Honmaru, Naka-ku, Nagoya, Aichi 460-0031, Japan
○丁目、○番地、○号などは英語にはない表記です。
名古屋城のように、1番1号ではなく、1-1と表記すると、外国職員さんにとって分かりやすいです。
日本の配達員さんのなかには英語表記に慣れていない方もいるかもしれません。
できる限り分かりやすい表記にすると、スムーズな仕事運びへと繋がるかもしれませんね。
では、
建物名や部屋番号が入っている場合は?
最初に書き、そのあと、住所が続きます。
東京都豊島区南長崎三丁目16番6号
トキワ荘(仮)201号室
↓
Tokiwa-sou #2013-16-6 Minaminagasaki, Toshima, Tokyo 171-0052, Japan
部屋番号には#を付けます。
階数を書く必要がある場合は、
・地下2階 — B2
F = Floor
B = Basement
の略です。
書く場所は、上記の部屋番号の位置に。
部屋番号と併記なら、「フロアー数→部屋番号」その逆でも大丈夫です。
送り先の住所は、資料やHPで確認出来ると思いますので、ここでの説明は省略します。
内容品を英語で書く
次に書くのは、住所と並んで同じくらい大事な内容品について。
ここを偽ったり、簡易な説明過ぎると、通関に時間がかかるだけではなく下手したら戻ってきます。
前回でも言いましたが、911以降、本当に厳しくなっています。
かなりシビアに荷物チェックされています。
ここでどれだけ丁寧に説明がされているかどうかで、ランダムに開梱されて荷物をチェックされる確率も減るでしょう。
内容品の詳細な記載
基本英語で記入します。
私の記載はこちら
説明すると、
中に入っているものは何か?
どんな作品か?
額縁は?
となります。
作品の種類毎に書きます。
このときミクストメディア作品を3つ入れたので一括して申告しています。
額縁サイズに分けて申告すると、より安心かも。
内容品の個数
種類毎の総計を記入。
私は1種3点としたいので、「3点」と記入。
正味重量
これ書いた方がいいとは思うのですが、郵便局員さんからは「書かなくて良い」と言われています。
なので書いたことありません。書く場合は、梱包材の重さを差し引いた重さを記入。
正味重量とは、梱包材や箱の重さなどを含まない、製品そのものの重さのこと。
内容品の価格
総額を記載。
販売価格で記載するか、原価価格で記載するか。
これはあなたの判断次第です。
私は課税対象の10000円~を超えないよういつも材料費+アルファで書いています。
ただし、何かあっても書いた金額までしか保険は出ないのでご注意を。
内容物の種類のチェック
□贈物 □書類 □販売品 □商品見本 □返送品 □その他(具体的に記載)
とありますので、当てはまるものに✔を入れる。
私は、その他を選択。”Art”と書いています。
昔はここまででしたが、やることがもう一つ増えました。これも911が残した負の産物です。
国際郵便の危険物申告書への✔と署名
飛行機に乗ったことがある方はおわかりだと思いますが、搭乗する際、さまざまなチェックがありますよね?
それと同じ事を荷物にもするのです。
紙面で事前申告する、というものです。
いざ!郵便局へ!
伝票は貼らずに、この申告書と荷物を持って郵便局へ。
重さを量り、送料が確定します。
コロナ禍では段階的に2回金額が上げられています。
発送前に価格が変わっている場合もあるかもしれないので、事前に確認しておきましょう。
思いのほか重さに厳密なEMS
大きい荷物を送る方は、大きな郵便局へ行かれた方がいいかもしれません。
というのも、郵便局では1g単位まできっちりと重さを量らないといけないのだとか。
相違があると、郵送がストップしてしまうことがある。。。
飛行機に乗せるからだとか(担当者談)。
ただ大きな郵便局であっても、大きな計りがあるのかは未確認です(ごめんなさい)。
行かれる前に一度、地元の郵便局に確認してください。
地域によっても違うでしょうから。
最後に
私がお伝えした梱包をするかしないかだけで、ギャラリストへの印象はもちろん、作品の保護力も倍増です。
伝票も慣れればなんてことないです。
何でも初めはドキドキで不安いっぱいになりがち。
経験していけば大丈夫です。
皆さんの作品が、世界中で笑顔の花を咲かせることを願っています。