飼育箱の準備
蚕はとても繊細な生き物。育てる環境を整えることは命を守ることにも繋がります。
10~15度で蚕は活動を止め、逆に夏のような暑さでは病気になりやすいです。
6世紀に養蚕が伝わったヨーロッパでは、19世紀に病気が蔓延し蚕が全滅してしまったという歴史があります。このとき日本が蚕の卵を贈り大変喜ばれた、という記録が残っています。
病気のサインには、下痢をする、食べたものを吐く、茶色っぽい体液を出す、体が黒っぽくなる、体に斑点が現れる、などがあります。そのような症状が現れた蚕は、他の蚕と別にし感染を防ぎます。
蚕を動かすときは直接触らず、桑の葉の上に乗せてから葉ごと移動する。
葉の上に動かすと言っても、蚕が自分で動くようにそばに葉っぱを置き待ちます。
葉は割り箸で持ち運び、蚕には絶対に触れない。
蚕は変温動物でかなり低温な生き物です。人間の温度では大やけどをして死んでしまうのだとか。なので絶対に直接触らない!
大切な蚕が病気にかからないために、温度や湿度の管理、通気性には気を配ります。また食べかすや糞などを取り除ききれいにしておくこと、殺虫剤など害となるものは使用しない、なども大事です。
農薬、防虫剤、殺虫剤、蚊取り線香、ペットのトイレシート、たばこ
でかいクモ、足長バチ、アリ、ネズミ etc.
1~2齢
2齢までに育つ蚕の体長は10~13mmほど。飼う頭数※1にもよりますが、今回はこのようなタッパーで育てました。
パラフィン紙(なければクッキングシート)※2を敷きその上で育てます。
この時期の蚕は乾燥した桑の葉は食べないので、水で濡らしたティッシュペーパーをタッパーの内側隅っこに置き、軽く蓋を被せます。
ペットボトルにお湯を入れた湯たんぽをダンボールなどの大きな箱にタッパーと一緒に入れ温度管理をします。このときダンボールで蓋をするのではなくタオルを被せます。
もちろんエアコンなどを使って温度管理するのもOK。ただ、エアコンの風が当たらないところで飼育してください。また、直射日光に当てないことも大事です。
・やけどには十分にご注意ください。
・まず1/4ほど水を入れお湯を入れれば、ペットボトルの変形はしにくい。
・硬めのペットボトルの方が扱いやすい。
・ミネラルウォーターのペットボトルがおすすめ。(洗うなどの手間が省ける)
お湯を入れたペットボトルの代わりに、カイロをタオルに巻いて温度調節をされていた参加者さんもいたようですよ~。
※1 蚕は家畜。牛や馬などと同じように1頭、2頭と数えます。
※2 桑の葉の場合はティッシュペーパー、キッチンペーパー、新聞紙でもOK。人工飼料は水分が吸い取られてしまうので必ずパラフィン紙かクッキングシートを使う。
3齢以降
2眠から目覚めエサを食べ落ち着いた蚕を浅めの箱へ移し替えます。
ここからは通気性を良くするため蓋は外し育てていきます。
蚕はどんどん大きくなっていくし、桑の葉も大量に食べ始めるので箱は大きめが良いです。
大きめの箱であれば何度も蚕を移し替える必要がないので、蚕はもちろん自分自身の負担も軽減されますよ。
私は適度な箱を見つけられず小箱を利用しました。それを大箱のダンボールに入れてますけど、本来はこれには入れずに飼育した方がいいです(蒸しやすくなるため)。
桑の葉の準備
桑の葉があればそれが一番良いですが、どうしても手に入らない場合は人工飼料があります。
見た目は抹茶のういろうみたいな感じ(笑)。桑の葉と同じ量を切って与えます。
人工飼料で育った蚕は病気になりにくいですが、繭は少し小さめに。
蚕が小さいうち(~3齢)は人工飼料で。4齢以降桑の葉で育てると、丈夫に育ち良い繭が出来やすい。
このうち約80~90%を5齢のときに食べます。
そのため、最初のうちは焦らなくても少量の葉があれば十分。
私の場合、20頭を育てるのに3齢に入るまでは、大きめの桑の葉1枚で1日足りていました。
3齢に入ると急に食べる量が増えるので少しずつ増やしていきます。1日5~6枚で十分でしたよ。
桑の葉は雨が降っていない日に摘みます。濡れた葉を食べると蚕はお腹を壊してしまいます。
必ず水分を吸い取り半日乾かしたら与えるといいです。でも乾かしすぎると食べてくれません。
木についている葉のようなみずみずしさが目安です。
摘んだ桑の葉は、濡らしたキッチンペーパーで包みジップロックに入れ野菜室で保管。1週間ほど保ちます。
私はついついさぼってしまい10日ほど経ってしまった桑の葉をあげていたけど、何事もなく元気に食べてくれました。
卵の届き方
蚕の卵はプロの育て屋(種屋)がいるのでそこから仕入れます。(個人による交配はNG)
私の先生の元に届いたお蚕さんの卵。郵送で届きます。普通にポスト投函ですって!衝撃過ぎます。
第3種とともに特例的な郵便。利用するには一定の承認条件があります。
第4種は以下の4種類。
①通信教育用郵便物
②点字郵便物、特定録音物等郵便物
③植物種子等郵便物
④学術刊行物郵便物
お蚕の卵の場合③に該当。③は栽培目的に限り承認されます。
これら以外にサイズや重さ、発送時の明記等いろいろな条件があります。興味ある方はこちらでご確認ください。(外部リンク:ディーエムソリューションズ)
既に孵化が始まっていますが、これは掃き立てに合わせて先生が準備してくださった結果です。
今回のワークショップでは、孵化したてのお蚕(毛蚕(けご)または蟻蚕(ぎさん))を譲り受ける日が掃き立ての日に設定されていました。
孵化した蚕に初めて桑の葉を与え飼育を始めること。
蚕に桑を与えること。
自分で卵を取り寄せた場合は、ここまで自分でやらないといけません。
私は掃き立てからのスタートなのでそれ以前の作業の説明は省略します。
が、25度前後を保った場所で卵を保管しておけば良さそうです。心配な方はご自身で調べてください。
ちなみに食べる桑の葉の色素によって吐き出す糸の色が違うそうです。ただこの”色”は表面に付いているだけなので、糸を紡ぐ間にほとんど取れるみたい。
孵化(ふか)
蚕の卵を産むのはカイコガと呼ばれる蛾の一種。モスラのモデルとなった蛾です。
カイコガは卵が重ならないように1個ずつ丁寧に並べて産んでいきます。
あまり動き回らず手近にあるものに産み付けるので、自分が脱した繭に産み付けることも。
ちなみに卵には糊のようなものに包まれているので、産み落とされた場所にくっつき動いたり落ちることがあまりありません。
400~500個の卵を一晩中休みなく産み続け、産卵が終わったメスのカイコガはエサをとらずそのまま生涯を終えます。羽化してから1週間ほどの命だそうです。儚いですね。
(非休眠卵)クリーム色 ⇒ 少し濃いめ ⇒ 青い点 ⇒ 灰青色(はいせいしょく) → 孵化
(休眠卵) クリーム色 ⇒ あずき色 ⇒ 青い点 ⇒ 灰青色 → 孵化
休眠卵:冬を越し次の春に孵化する卵
非休眠卵は、自然の状態であれば産卵から約12日ほどで孵化します。
直径1mm、長さ1.3mm、厚さ0.5mmほどの楕円形
卵一個の重さ
約0.5g
Day1
ワークショップ会場で孵化の様子を見学。
あまりの小ささに虫眼鏡がないと見られないほど。
日が上がり明るくなってくると孵化が始まります。
白色の卵が孵化後のもの。灰青色がこれから孵化する卵。
黒っぽいままの卵は休眠卵。
孵化が終わったらいよいよ初めての餌やり(掃き立て)です。
掃き立て(はきたて)
掃き立てとは初めて蚕に給桑(きゅうそう)すること。
蚕のサイズに合わせて桑の葉を短くカットします。
毛蚕はまだ噛む力が弱いので刻んだ葉を上げることが重要。
まだ体長がわずか3mmと小さいので、やりにくければハサミでカットすれば良いし、簡単に葉に切り込みを入れるだけでもOK。切り込みを入れる場合は、ハサミでなく手でも大丈夫。
立ち上がるようにして食べています。
わずか1時間ほどでこんなに↓食べました。
蚕は上に登っていくという習性があるので、葉は蚕の上にそっと置く。
前述の通り、まだ噛む力が弱くしばらくの間はやわらかい葉の裏を舐めるようにして食べます。
硬い葉ではなく柔らかめの葉を与えましょう。ただ新芽は食べないので、最大光葉(さいだいひかりっぱ)を摘んであげます。
1日目夜。初めて自分で給桑しました。
黒い点々は糞。黒コショウより小さいです。
葉っぱがでかいですね。。ホントはもっと刻んだ方が良いんですけどね。