脱肛のその後
上蔟直前からの異変に対応してきましたが、28日目朝全ての蚕が糸を吐き出せないほど弱っているのを確認しました。
あまり動かず悶えている印象。
なす術はなく、このまま命絶えるのを待つだけです。
やはり原因は葉に付着した化学物質。
それが何かは特定できませんがおそらく農薬。
リン酸系は即効性が高いようですぐにのたうちまわるらしいんですが、うちの場合はタイムラグがありました。
少しずつ脱肛が発症し動きがさらにゆっくりになっていく感じです。
致死量には満たないけど、わずかな不純物に少しずつ体の中が侵されていたんでしょう。
この結果に「苦しい」しかないです。
摘む桑の木を選び間違わなければ繭を作り始める段階(営繭)に突入していました。
仕方ないと言われても明らかに人的ミスですね。
先生が専門家に聞いてくださって情報を伝えてくれています。
蚕にとっての農薬問題はかなり深刻だそうです。
蚕仲間との会話でも、近所の方が頻繁に除草剤をまいている、と言う話でした。
こんなにも自分の周りには化学物質が溢れているのか、と思い知らされました。
時間が経つたびに黒色部分が広がっています。
この部分が侵されていたんでしょうか。。
軽い気持ちでお蚕を育てない
個人的な意見ですが、軽い気持ちで蚕を育てるのはやめた方が良いです。
お蚕はものすごくセンシティブな生き物です。
細かいところまで気が回らない人は飼育に向いていません。
そして桑の葉は安易に野生のものはあげないこと。
農薬などの目には見えない激物が付着している可能性があります。
桑の木が生えている周りを十分に観察し、田畑のあるところはもちろん自家農園や雑草の有無も確認がマストです。
雑草の場合は除草剤などが使われる場合があります。
自家農園の場合は、どのように育てられているのかをじっくり見て確認すること。
今回私が最後に採った桑の葉は少し離れたところに畑がありました。
農薬か何かが風で飛来したかもしれません。
蚕の症状を見るとそばで使われた量ではないので、思いもよらないところから飛んできた可能性があります。
この数年畑での栽培はされていなかったと判明。
これでより理由が不明となりました。
自分の予測だけでは何ともならないこともあります。
最初から人工飼料で育てた方が安心ですし、とりわけ繊細な命を育てるわけですから人工飼料に頼りできる限りリスクを排除すべきです。
どれだけ気をつけても起こりうるハプニングもありますが、今回私が全滅させてしまったようなことが起こらないように事前に出来る限りの準備をすることができます。
そのために何が必要なのか?
本当に自分はそれをできるのか?
最後まで責任持ってやり遂げられるか?
私は最後の最後まで情報を収集して対応しました。
専門家からのアドバイスや原因予測をいただき、隔離中心にやってきました。
(基本的に病気になった蚕に施す処置はありません)
もう糸を吐けないと判断してからは蔟を移動しみんなを寄せ集めました。
蚕を育てるというのは大変な飼育です。
だからこそ養蚕家というプロがいるわけなんですよね。
またまた個人的な意見ですが、ど素人が簡単に手を出すべきものではないです。
飼育するなら細心の注意を十分に払うこと。
でも手の出しすぎもダメでしょうね。塩梅が難しいです。
今回私が育てたのは21頭。
たった21頭かもしれないけれど、されど21頭です。
それぞれが尊い命。
いずれ命を奪うとしても、糸も吐けずに苦しんで死なせてしまうことにさらに罪を感じます。
お蚕を育ててみたい、と思う方は、必ずこのシリーズを全部読み、本を読み、ネットでも調べてください。
そして熟考し、自分なら大丈夫!と確信を持てたら準備を万全に整えて飼育を始めてください。
これで飼育記録は終了とします。
この先も続くワークショップに参加すれば引き続き有益な情報をお届けします。
営繭
記録なし
収繭
繭を作ることなく全ての蚕が土の中へ還っていきました。
それでもワークショップには続きがあります。
先生のご厚意で繭を20個いただき、続きのワークショップへ参加することができました。
繭ができ2~3日後に冷凍庫に入れ保存します。
他に収繭のタイミングを見極める方法は
・振るとカラカラ音がする
振ってもカラカラ音がしない場合は、繭の中にいる蚕がサナギになっていない証。
サナギになる前の蚕は、自分が這い出した糸で自分の身体を固定させています。
冷凍保存するのが遅れると、繭から蛾が出てきてしまうので要注意。
精錬
お蚕の場合、精錬とは繭からセリシンなどの不純物を取り除くことをいいます。
この精錬の流れを簡単に説明します。
繭のチェック
精錬の前に繭に汚れが付いていないかチェックします。
汚れが付いたものと一緒に精錬するときれいな繭にまで汚れが染みついてしまうためです。
汚れの原因は、繭の中で死んでしまったサナギまたは蚕の体液だそう。
表に少し付いているしみは、繭を作るときに唯一するおしっこだと思われます。
この場合は精錬しても構わないのだとか。
その他精錬できない繭は
・サナギになっていない繭
繭を煮る
これから繭を煮て精錬します。
収繭したばかりのフレッシュな繭はそのまま煮ることができますが、古い繭や乾燥した繭は茹でる前に20時間以上水に浸しておきます。
繭を煮るための準備
- 繭をネット(不織布の排水溝ネットがおすすめ)に入れ、中で動かないよう口を結ぶ。
- 鍋に水を入れ煮る準備をする
・鍋底に繭が付かないようザルや網を敷く
・鍋はスレンレス製◎、鉄・アルミは×。ホウロウは傷が付いていたら×。
・落とし蓋と重し
・水2L
・重曹6g
※重曹はセリシンを取り除くのに必要なアルカリ性を保たせてくれる。
繭を煮る
- 鍋に水を入れ沸かす
- 70℃になったら重曹を入れ繭も入れる
※繭がすべて湯に沈んでいるようにする - 落とし蓋をのせ、重しをのせる
※重しを乗せる代わりに、箸やトングで上から押えてもOK - 沸騰したら1分煮て火を止める
- コップ1杯分の水を入れる
※急激に温度を下げ、繭の中にお湯を浸透させる - 40℃まで冷ます
- 再び火を入れ沸騰させる
※沸騰後は中火にし、15~30分ほど静かに煮る
※新鮮な繭は15分ほどでOK - 火を消し、再び40℃まで冷ます
繭をすすぐ
- ぬるま湯をたらいなどの大きな器に入れ、繭をしっかりすすぐ
※力を入れすぎず丁寧にすすぐ
※揉むと中のサナギが潰れてしまうので注意
※2,3回ほど水を替えすすぐ - 手で優しく包み込むように繭を持ち水を絞る
繭を乾かす
- 繭をネットから取り出しタオルの上に広げて乾かす
- 2~3日そのままにし完全乾燥させる
※風通しの良いところに置く - 糸を取り出すまで日にちがあれば、もう一度ネットに入れ、風通しのよいところにぶら下げて保管する
※長期保存の場合は防虫剤を入れる