「日本ではアートは売れない」
という作家にとって胸が苦しくなるような言葉をよく耳にします。
そんなことはない!と著名な芸術家を見てはそう思っていました。
だって現に売れてる人がいるわけですから。
どの世界においても、”それ”だけでは食べていかれない人が大多数であって、なにもアート業界だけが特別悲観すべき事情ではないと思っています。
しかしなぜ「アートは売れない」という価値観が育ってしまったのでしょうか?
「美術」の歴史はまだまだ浅い
アートに該当する言葉「美術」はなんと明治時代に誕生したもの。
まだ150年ほどの歴史しかないことがわかります。
1873年開催のウィーン万国博覧会に参加するため、
という議論の末、生まれたそうです。
そしてどんなものが「美術」に当たるのか。
このウィーン万国博覧会に出品されたものを見れば、ある程度答えが見えてきます。
・工芸品
・名古屋城の金鯱
・大太鼓 など
現在とそれほど差異のないものが「美術品」として位置づけられていました。
もともと壁にモノを飾る風習がない日本
江戸時代までは、西洋のように壁にモノを飾るという風習は日本には(ほぼ)ありませんでした。
【要の美】を重んじてきた日本において必要のないものを壁に飾る、という考えは微塵もなかったんでしょうね。
加えて、アートを窘める身分のお屋敷を考えても、壁自体があまりないことが予想つきます。(もちろん全てにおいてではないですが)
わびさびという日本独特の感性も手伝って、飾ると言えば床の間の掛軸くらい。
雅で粋な感性ですよね。
手探り状態のアート教育
明治維新以降、【西洋に追いつけ追い越せ】の時代となり、日本古来の風習は変容を遂げていきます。
ウィーン万国博覧会は1837年。明治6年です。
国が中心となり実行させた一大プロジェクト。
以降、どの展覧会や試みも多くが国主体。
それも時々で管轄が変わる。
今の日本もそうですね。
おかげでまとまりにくいし、利権が最優先されることもある。
アートという概念・歴史が浅い上に、利権が絡まったら発展するものも発展しない。
中には厚い志を持って動いた偉人もいます。
その方々のおかげで、今のような美術館や博物館が誕生したことも事実。
ホント感謝ですよね。
そんな歴史の浅い日本ですから、教育だって手探り状態です。
日本も海外のようにアート史を学びますが、表面上のものが多くライトな内容ばかり。
作品やアート史自体の背景を知る方法を学べないんですよね。日本の義務教育では。。。
そもそもアートの鑑賞の仕方すら学ばない。
教える者が解ってないんですから当然と言えば当然。
✔丁寧に描く
✔決められた背景(制作意図)のみを教える
これでは想像力(創造力)が伸び悩みます。
歴史の浅さ
・明治維新以降、ようやく「アート」の歴史が始まる
教育の遅れ
・アートの根本を教えられる教育が少ない
・職業アーティストとして食べていかれるのはほんの数パーセント
文化の相違
・アートに対する考え方の違い
・海外は投資目的の一つのツールでもある
国民性
・アートを難解なものに考えすぎる
・制作意図をしっかり理解しないとダメだと思い込む
・右ならえの国民性が正解のないアートの世界には馴染みにくい
・ブランド志向(有名、海外で活躍!に飛びつきやすい)
利権争い
・管轄が統一していないので個人プレー
・それぞれの主義主張・縄張りのため総力戦が叶わず拡大しない
これらが複雑に絡み合って、現在の日本のアート事情が存在しています。
創作活動するなら海外?!
国を引っ張っている官庁のお偉いさまたちもアートに対する造詣は浅いと感じます。
それは予算の数字にも大きく現れています。
全体の予算の内、アートにかけられるお金は僅か0.1%。他国の1/10ほど。
愕然としますよね。アーティストを目指している方は。
後押しが弱い日本ではあらゆる理由で表現者にとってとてもしんどい国でもある、ということ。
だから皆海外へチャレンジするんですよね。
市場の大きさも日本は全体の僅か3%。
アメリカは43%と約半分のシェアを誇ります。
日本で生きる事も一つの手立てですが、居心地の悪さを感じるなら、野望が世界規模なら、さっさと海外へ行った方が得策。
苦労も多いだろうけど、結果を出すのはより早いかも知れません。
私は海外へ移住することを真剣に考えていました。
「考えていた」と過去形ですが、今でもそのくらい日本のアート事情には危機感を持っています。
とは言っても、日本はこれからアートの歴史を作っていく国。
期待があるのも事実です。
でもまずは他国のアート史に足を踏み入れることで日本のアート史を盛り上げていく。
そんなことが出来たら最高だな、と感じています。
そもそも「売れる」とは?
日本ではアートが売れないと言うけれど、全く売れていないわけでもない。
村上隆さんや奈良美智さん、草間彌生さん、岡本太郎さんなど名だたるアーティストは日本はおろか海外でも人気ですよね。
そこまでいかなくても、実は知らないだけで売れている職業アーティストさんはたくさん居ます。
ここで肝心なのが
「売れている」
そう判断するものさしは何でしょう?
何をもって「売れている」とするのか?
いろいろな解釈があり、いろいろな答えが飛び交うでしょう。
そう、結局は個人差。一概に言えないんですよね。
一年に200作品以上を販売する画家さんもいます。
在庫が一切ない(要は確実に完売する)画家さんもいます。
ただみなさん知らないだけなんです。
憂う必要もない。
どうスタンスを保つか。
ただそれだけで、日本でだってしっかり活動することができるわけですよ。
ここで一番大事なのが
コアなファン作り
作品を手にすることで
その先にどんな幸せな未来が待っているのか
ここをしっかり想像させられるような人が、のちに職業アーティストとなりえる。
日本人のブランド志向がここでも発揮されるわけですね。
もちろん作品の持つパワーや魅力は外せないですけど。
めちゃシンプルなんですよね。
で、結局は海外に出たほうがいいの?
てか、それが一番大事!
最後に
私は、「今」創りたいものを「創る」ことに集中しています。
ニューヨークで個展をやったら次はベルサイユ宮殿!
なんて言い放っていたけれど、そういうことじゃなくてもっと自分の内を育てることに価値を置き始めました。
作品は作り手のすべてを受け継いで生まれてきます。
どんな人の手をつたい、この世に作品として誕生したのか。
どんな人物が、どのような作品を生み出し、どのようにお届けするのか
そちらのほうがはるかに大事であって、SNSなどが発達している今の時代、どこで活動しようとそれほど関係ないのではないかと感じます。
どのような気持ちで作品を創っているかにもよるけれど、、
作家たちは何らかの良き作用を人々に与えられたら、という想いを少しは込めて活動しているはず。
そのためには、それら想いの純度が高い作品を生み出すことが最優先。
大好きな場所があって、モチベーションが上がるから「この場所を拠点にしたい!」というのは作品に高作用をもたらすので、そのための場所選びは良いですね。
どこであっても、自分らしく生きられ創作できる環境がベスト!
そんな場所探しは、人生を旅するかの如くで楽しいですね。