たくさんの命が宿っているサスティナブルな着物生地

最近「サスティナブル」って言葉をよく耳にしますよね。

アパレルの世界では、ファション用語としてすでに確立しています。

私が初めてこの言葉を耳にしたとき、メディアが作った流行語だと思いました。
あるとき意味を調べてみたら、流行語ではなく現代の問題を大きく反映しているワードだったことを知り、深く考えさせられました。

 

ごみを減らすことが当たり前に

サスティナブル=「持続可能な」

意味合いとしては「いかに環境に負担かけることなく新たな生産を実現できるか」といったところ。

 

 

私が覚えている中で一番古い地元のゴミ分別は

燃えるゴミ、燃えないゴミ、大きなゴミ、危険ごみ

の4つのみ。

 

今は分別が細かくなりゴミの日も増えている。
ゴミを減らせばゴミ出しする頻度も減り、楽なんじゃないか?と思った。
みんながその”楽”を積極的に選択すれば、街に溢れるゴミも減る。

 

数年前にゴミ処理場の見学へ行ったとき驚愕した。あまりのゴミの多さに。

1日で収集する燃えるゴミは、たった1日で焼却されるわけではないのでどんどん溜まる。
それら全てを焼却し終わるのに数ヶ月を要する。だからどんどん溜まる。

 

現在の地元の焼却炉は発達しているので有毒な排気ガスは出ないそう。

ただゴミを燃やすことで排気される二酸化炭素は少なくても発生してしまう。
ゴミを減らせば二酸化炭素を減らすことに繋がり、自然を守ることにも繋がる。

これが世界的に当たり前になれば、どれほど美しい地球になるんだろうね。

 

1枚の着物に必要なお蚕の数

古着着物を使いアート作品を作るようになったら、不要とされる着物がたくさん私の元へと届くようになった。

一個人では考えられない数を保管している。

私の周りだけでこれだけの着物が「不要」とされている現実。
日本全国で考えたらどうだろう?天文学的数字じゃないかな。

 

着物は絹から出来ているのはご存じの方が多いですが、では

一枚の着物を作るのに必要な繭の数ってどれだけだと思います?

一枚の着物を作るのにお蚕さんは2000頭以上も必要だと言われています。

 

お蚕も命

命を頂いて着物は出来上がっているんです!

 

着物一枚作るのに必要なお蚕は2000頭以上。
糸を紡ぎ、織り、染色し、柄を描き、仕立てる。
この行程だけでも数十人の職人の手が加わる。

 

こんな事実を知ったら「簡単に捨てては駄目!」だと私は思う。

 

とはいえ、いろいろ悩まれて最終的に(後ろ髪引かれながら)処分するという選択をとっている方がとっても多いです。

だから「捨てるのは忍びない」とリサイクルショップにも持ち込むんですよね。

 

その数なんて愕然とするほど。

「もらっては困るものNo.1」という不名誉な称号を与えられてしまうほど着物って厄介者扱いされている。

 

そうはいっても、みんながみんな不要の着物をリサイクルショップへ持ち込むわけではない。

ゴミとして捨てられたり、野焼きがまだ法律的に禁じられていないときには焼却されることすらあった。

庭先で焼却処分したという個展来場者さんの話に言葉失ったこともある。

 

こんなに美しい着物がたどる末路。

新たな方が魅力を見出し着ることはほんの数パーセント。

ほとんどが眠ったままの状態で、”最後の時”を待つ。

 

 

解いた着物は一枚の生地になる?!

着物は「着るもの」なので、着た方がいいのは当然。
でも、状態や好み、サイズなどの理由で着られない着物は山ほど在る。

そうなれば皆さんが思いつくのは着物リメイク

 

着物の多くは正絹。優れた絹。

新たに絹生地を買おうと思うと、ちょっぴり値がはる。

でも着物ならものすごくお値打ち。

 

昔の反物は、幅9寸5分(約36cm)長さ3丈(約12m)

今はもっと幅も広がったり長くなっている。

といっても、比較的新しい着物を解いても幅が36cm以上のものはあまり見かけません。

1寸=3.03cm
1分=0.303cm
1丈=10尺=100尺=1000分

 

胴裏部分は羽二重を使うことが多いので別生地。
基本、表地と八掛は違う生地を使うので、メイン生地は12mと考えた方が良いでしょう。

 

今の反物は平均16mですが、”古着着物を解く”という前提でお話ししていますので、昔の平均サイズで話を進めていきます。

16mとは言わなくても12mもあると思うと、解けばかなり使えるテキスタイルとなりますよね。

痛んでしまっていたり汚れてしまっていたりする部分は省きますから、使える部分は減ります。

 

それでも十分。なかなか活用しがいのある量です!

着物は直線断ちされている合理的な衣服。解けば反物の状態に戻せる。

(ま、もちろん途中で切断されてるんで、完全に一枚の生地にはならないけどね)

 

着物はこのような作り↓
パーツ部分はそれほど多くはありません。

これを解くとこんな感じ↓なります。こちらは単衣の紬風着物。

 

もっと分かりやすく反物の状態を図↓にしてみます。

 

上図は着物(表地)部分。下図は八掛(裏地裾周り)部分。

着物部分は12m、八掛部分は4m。

見ればおわかりの通り、直線断ちされています。
解いて洗ってもまた簡単に仕立て上げることが出来ることが解りますよね。

 

もの作りにおいてはものすごく扱いやすいカタチ。

直線断ちされているから、有効に使いやすい。無駄が生まれにくいからね。

 

着物こそまさにサスティナブル!!!
ビンテージなんて超当たり前!

 

中には価値あるアンティークものが眠っていることもある!

銘仙なんてもうアンティークの域だから、収集家がめちゃくちゃ多い。私も好きです。

 

「ビンテージ」は20~30年ほど。「アンティーク」は100年超えのものを指す。ちなみに「レトロ」は、古風なデザイン・雰囲気という意味。新しくても昔っぽいデザインならレトロと呼ばれます。

 

古着着物を積極的にリメイクしよう!

着物リメイクというものは、この合理的な作りを活用して古着着物を再利用するのです。

直線断ちのおかげで使いやすいクラフト材料にもなる。
しかも古着着物って絹で出来ているし。天然絹地を購入しようと思ったらかなり高い。

昔の着物なら天然絹がメインなので、マテリアルとしては最高品質。

それが今ではリサイクルショップなどで格安で手に入るんですよ。

これ、使わない手があります?というわけ。

 

ただ「柄が素敵♡」「伝統品だから」という理由だけじゃなく、素材としても最高品なので再利用を激オシしています。まぢでお勧めです!!!

 

確かに、実際に使うまでの「解いて洗ってアイロンかけて」など手間がかかりますが、作品や商品となって仕上がったときの悦びを感じたら苦痛な作業ではないはず。

 

そして実際にリメイクしたら是非作品写真をLINEで送ってください。
送って頂いたアイデアや作品はトピック記事やSNS等でご紹介します!
もちろんあなたのSNSアカウント付きで。

あなたのアイデアがどなたかのお役に立つかもしれません。

 

解く時の注意点と作業の順番

①仕立てられた順番で解く

衿 → 衿下 → 表地と裏地を離す → 裾 → 袖 → 各パーツ

が目安。ただ仕立て方によってはこの通りにはならないので、衿と衿下を解いた後は解けるところから解いていきましょう。

【注意点】
リッパーで丁寧に解く。無理にひっぱったり、糸切りはさみを使うことはNG。
・切れ端は、洗ったときに糸が出やすいので、ピンキングばさみでカットするかまつる。

②洗う

手洗い推奨ですが、洗濯機でも洗えます。

・まず、一番汚れている共衿(掛衿)部分で染料の落ち具合を確認します。染料漏れがなければ、洗濯ネットに入れ洗濯機で洗います。
おしゃれ着洗いコースで、脱水時間は30秒ほどが目安。あまり脱水時間が長いと、しわになり、あとでしわを伸ばすことが大変。
絹が洗える液体洗剤を使用。
染料漏れがひどい場合は、ご自分で洗うのを諦めてください。プロにお任せした方がいいです。

伝統的な洗い張りという方法もあります。伸子(しんし)を打つのにコツがありますが、一度は体験してみる価値はありますよ。洗いに関してはまた別トピックでお伝えしますね。

洗い張り

③干す
風通りの良い日陰に干す。このときシワをしっかり伸ばして干すこと。
④アイロンをかける
乾いたら、あて布をし中温でアイロンをかけます。
この方法は、オールマイティではありません。状態は着物によって異なります。
 
まずは、結果がどうなっても受け容れられるような着物で試してみてください。少しずつ経験しコツを掴むことで、ある程度の着物を洗えるようになります。
 
そして、洗える着物、洗えない着物の区別も付くようになります。染料の滲み出しについても見分けが付けられるようになります。
 
何事も経験です。
まずは着物一枚試し洗いしてみてください。
 
そこでハマったら、どんどん洗って、どんどん活用してください。古着着物も喜ぶでしょう。
もし、洗うのは面倒だけど着物生地使いたい、と言う場合は、業者さんに解いて洗ってもらうか(洗い張り)、クリーニングに出したあと自分で解くか、ハギレを購入するか。
 
リサイクル着物は一般的には洗われていないものがほとんどですが、まれに「クリーニング済み」というお店もありますので、根気よくお探しください。わかりやすいのは、袖に仕付け糸が付いたままのやつ。それはクリーニング済みです。
 
 
 

着物は1点もの

プレタポルテのようにプリント生地で作られたお着物とは違い、一枚一枚手書きまたは型染めされたいわゆる「ザ・着物」は先ほども話したとおり正絹が多い。柄も一点もの。

同時期の同工房で作られたものにはそっくりな柄行の反物が存在するけど、基本「一点もの」と考えてもいい。

↑の写真。愛知県在住の私が姫路市内の着物リサイクルショップで出会った銘仙。右は私の着物ベア。左がリサイクルショップの銘仙。

 

リサイクル着物の良さは

チェック(透過) 一点もの
チェック(透過) 上質な生地
チェック(透過) 安い

上質なマテリアルをお値打ちに手にできちゃう。

私はここ↑に「今にはない斬新なデザイン」が加わります。

 

あなたのアイデア次第で

着物をリメイクする楽しみが増す
唯一無二のデザインをお魅せできる
オンリーワンアイテムをお届けすることが叶う

着物って着るのもそうだけど、リメイクとして使うのも万能。無限の可能性が眠っている。

 

だからね。みんなにはどんどんその眠りから着物たちを目覚めさせて欲しい。

着物ってめっちゃすごいじゃん!

そんなふうに発信する人がもっともっと増えたら処分される着物は減るんだろうな、って。

これもサスティナビリティの活動となるんだよね。

 

私も”着物デストロイヤー”だからこそお伝えできる、アップサイクルアイデア着物のあれこれを発信し続けていきますね。